OL涼子 その2-1
秋葉が涼子と激しい金曜日を過ごしてから1か月程が経った。
落ちこぼれの部署の秋葉とは言え営業を担当しているのでそれなりの客先を持っている。と言って本社時代のコネを使った客先だが。
今日はそのうちの1社、秋葉に取っては数少ない大手企業に顔を出していた。受付で案内を請い、受付嬢に連れられて応接室に入って待っていると、いつもの営業担当者の男性とその背後に一人の女性がついて部屋に入ってきた。
その女性を見て直ぐにあの時の涼子だと分かったがそれは顔には出さずにいると、いつもの営業担当者が
「こんにちは。今度うちの会社で担当替えがありましてね。これからは貴社の窓口はうちの村瀬が担当することになりました」
そうして村瀬を紹介する。
一方涼子も部屋に入った瞬間にあの時の行きずりの男だと思い出したが顔には出さず、お互い初対面の様に名刺を交換する。
野瀬の名刺には社名、所属、電話番号、メルアド等が書かれ村瀬涼子 という名前が書いてある。
(あの時の涼子だな…間違いない)
名刺を受け取って席について仕事の話をしながらも時折野瀬をチラチラと見ていた。
涼子は秋葉の名刺を受け取ると
(秋葉隆文)
同じ様に名前、メルアド、電話を見てからまるでお互いに初対面の様に面談をしていく。
面談が終わると今までの担当者から
「じゃあ、今後は村瀬と話をしてください」
「かしこまりました」 そう言って野瀬を見ながら
「今後共よろしくお願いします」
「こちらこそよろしくお願いします」
そんな挨拶を終えて客先を出ると会社までの戻り道あの時の女がこんな近くにいたとはな…こりゃ何か起こりそうだ。と1人でニヤニヤしていた。
秋葉を見送った涼子は自席に戻って名刺を見ながら
(あの時の男性がまさか取引先の会社の男だったなんて。あの時のセックスの事は絶対に覚えているはず。 でも今日の態度は全くそれを見せてこなかった。口が堅くてセックスの上手い男か…うふふ)
涼子は涼子で内心でニヤニヤとしていた。
涼子と偶然再会してから1週間後の金曜日の昼過ぎ秋葉のメールに涼子から着信が入ってきた
− お久しぶりです。色々とお話をしたいので今日の就業時間後、お店を予約しております。是非お越しください ー
文面の後に時間、店のマップ、電話番号が書いてある。
それを見てからOKの返信を打つ。
終業後、時間少し前にその店に行くと既に相手は来ていると店員に案内されて個室になっている部屋に連れていかれた。
中に入ると涼子は既に席についていた。コートを壁にかけて、この日はグレーのタイトスカートスーツに白のブラウスという姿。
「お待たせしました」
そう言って向かいの席に座ると涼子が店員に初めてくださいと言い、テーブルにあったビールを持って
「どうぞ」
お互いに注ぎあうとグラスを掲げてビールを飲む。ビールグラスをテーブルに置くと、涼子が秋葉を見ながら
「ばれちゃったわね」
サバサバとした口調で涼子が会話の口火を切る。それはばれて困ったというよりは、どこかでまた会うかもという思いが成就した様な感じで。
「ああ。びっくりだよな」
涼子の口調にこちらに敵意が全くないと感じ取った秋葉は同じ様な口調で答える。
身体を合わせた男と女。普段の仕事での口調ではなくフランクな口調で話が始まる。
「まさか会うとは思ってなかったけど、でも同じ駅から乗り込んできたんだもの、確率は0じゃないわよね」
「そういう事。こっちは再び会えてうれしかったけどな」
そう言うと顔を上げて潤んだ目で秋葉を見ながら、
「本当?私も実はそうなの。あれ程気持ちよくなったの初めてだったし」
料理が運ばれてくると会話が途切れるが店員が下がるとまた会話がスタートする。
「秋葉さんって口が堅いし、紳士なのね。普通ああやって会ったら直後に私に連絡してきて又会おうとかいうと思うのにこちらから連絡するまで何もしてこなかったよね」
「最低限のマナーだろ? この年だし周囲に自慢する話しでもないしさ。それにあの時の約束は覚えてたからね」
その後は聞かれるままに秋葉が自分の事を話ししていく。元々親会社にいて失敗の責任を全部取らされて子会社に飛ばされたこと、それが原因で離婚して今は1人で○○駅の近くのマンションに1人で住んでいること。
親会社に戻ることは100%無いってわかっているので出世競争もせずにのんびりとサラリーマンをしている事等