IT'S YOU-1
「うーん…」
杏奈は額に手を当てながらゆっくりと目を開く。
(あれ?寝ちゃった…)
まだ視界がぼやけていた。頭がボーっとする。昨日はだいぶ飲んだようだ。居酒屋で飲んでた以降の記憶が全くなかった。視界が段々戻り、天井を見つめる杏奈。
(ん?ウチじゃない…。ここドコ…??)
今いる所が自分のマンションではない事に気付く。異変を感じ、目を左右に動かして部屋を確認する。すると杏奈はある事に気付く。
(こ、ここって…、まさか…、ラブホテル…!?)
目をガッと開き、しっかりと確認すると、完全にラブホテルであった。
(な、何でラブホにいるのよっ!?…て事は…)
一人で来る訳がない。きっと誰かと一緒だ。誰かと言うより、昨日の状況からして隣にいるのが誰かは決まっている。杏奈は恐る恐る横にいる男の顔を見ると、間違いなく杉山であった。ぐーぐーと気持ち良さそうに寝ている杉山を見て杏奈は飛び起き、少し離れてへたり座る。
(な、何で杉山君とラブホにいるの…!?ん??てか、裸じゃない!?)
自分も杉山も裸であった。着衣は乱雑に床に落ちていた。ちなみに杏奈の黒のブラジャーとパンティはベッドの上に落ちていた。
(ま、まさか…、ヤッちゃった!?嘘でしょ!?)
全く覚えていない。もしかして裸になっただけでヤッてはいないかも知れない。杏奈は慌てて自分の股間を確認する。
(…、ヤッちゃったわね、これは…)
杏奈は頭を抱えた。
(一体何がどうなって杉山君とヤッちゃったのよー!!)
必死で記憶を辿るが、やはり全く記憶にない。一体何故ホテルに入り、どんなセックスをしたのかまで謎だ。杏奈はまさかの杉山とのセックスに呆然とした。
「んんん…」
杉山は唸ると、ゆっくりと目を覚ました。が、杏奈を見て驚きもせず、平然と言った。
「杏奈さん、おはようございます…」
杏奈は前をシーツで隠し体を小さく縮こませる。
「お、おはよ…」
眠そうに目をこする杉山を恐る恐る見ていた。
杉山から見れば少し離れて縮こまっている杏奈が不思議だった。
「どうしたんスか?そんなとこに蹲って…。」
あくびをしながら言った杉山に、杏奈は聞いた。
「もしかして…、私達…、ヤッちゃったの…??」
そんな杏奈に杉山は驚く。
「えー!?覚えてないんスかー!?あんなに激しかったのに…」
「は、激しかった…!?わ、私が…!?」
「ハイ。凄かったっス。えー!?マジで覚えてないんスか!?」
「う、うん…。」
杏奈はバツ悪そうに頭をかいた。