the goddess of victory-5
「祐輔?」
頼が弁当を見つめたままの俺の顔を覗き込む。
そのまま頼を抱き締める。
「ありがとう、凄く嬉しい」
「これで記録出さなかったら別れるからね」
「大丈夫だよ、言ったろ?弁当あれば元気百倍だって」
俺の腕の中で頼が笑う。
本当に幸せだよ。
頼の想いが十分伝わったよ。
不安に思う俺が馬鹿だったな。
「本当にありがとう」
「いいえ、ちゃんと観てるから。いつも通りの祐輔の走りをしてね」
バックに弁当をしまい、時間なので俺は会場に向かった。
いよいよ始まる。
開会式の最中、観客席から頼を探す。
頼は制服を着て学校の応援席の一番後ろに座っていた。
隣には敏弥の姿がある。
あいつも観に来てくれたのか、これは真面目にやらないとな。
午前の予選と準決勝は問題なく勝ち上がった。
ゴールをして観客席を見ると頼が必ずあの笑顔で俺を観ていた。
待ちに待った昼休憩。
頼が作ってくれた弁当を広げる。
中には綺麗に詰められたおかずとおにぎりが入っていて、勿体ないなと思いながら一口一口噛み締めて食べた。
どれもとても美味しかった。
袋をよく見ると中にメモが入ってた。
それには頼の字で大好きと書かれてあってそれを見た瞬間俺は赤面した。
さて、残るは午後の決勝のみ。
陽が傾き始め、暑さもピークのときに比べて和らいできた。
いよいよ、決勝。
全国大会に進めるのは二人と決められているが、俺にはプラス記録の更新という課題がある。
「まもなくハードル百メートル走決勝が行われます」
アナウンスが流れ、沸き上がる歓声。
決勝に進んだ六人の中から勝者が決まる。
俺以外の五人は先生の予想と合致していたので大体のタイムは分かる。
さて、本領発揮といきますか。
コースへ各々が位置に着く。
さすがに決勝は緊張する。
俺は観客席にいる頼を見た。
頼はじっと俺を見て口を動かして、私がついてるよと言い、女神の微笑みをくれた。
隣では敏弥が拳を上げる。
「位置について」
俺は深く頷いて、スターティングブリッチに足を置く。
よく観てろよ。
「よーい」
きっと惚れなおすぜ。
パーンッ
合図と共に走り出す。
踏み切りのタイミングもうまくいき、白いハードルを一つ一つ確実に跳び越える。
いける。
ラストの直線を全速力で走り抜く。
目の前には白いテープが現れる。
他の走者とほぼ横一線。
負けるわけにはいかないんだと速度を上げる。