家族旅行での出来事 同窓会タイム 3-8
「綾乃さんに任せておけば大丈夫。
それに、本村君だって、さっきのでずいぶん成長したはずよ。
大丈夫。必ずうまくいくから。
綾乃さんとうまくできたら、そのあとは、香澄さんと史恵さん。
そして次は綾乃さんも入れた3人を、同時に、本村君が楽しませてあげるの。」
「じゃあ、加寿美先生とは……。」
「あら。先生のこと、そんなに好きになってくれたなんて、うれしいわ。
でもね、実は……先生の本命は別にいるの。」
「別に?この学校の先生ですか?」
「そうね。教えちゃおうかな……。あなたたちの担任、わたしの実習の指導教官よ。
わたしはそういう女。本村君が深く関わるべき女じゃないのよ。」
加寿美の本命が自分たちのクラスの担任だということを聞いて、
匠は少なからずショックを受けたようだった。
実際、教育実習生の加寿美先生とクラス担任の間に肉体関係があったかどうかは、
香澄は知らなかったが、
それが事実かどうかは今はどうでもいいことだった。
匠の、思い込みの中に現れた、
教育実習生の加寿美先生の役をこれ以上演じ続けることに、香澄は限界を感じたのだ。
年上の女性が年下の、しかも実習先の男子高生を誑かす魅力もあったが、
いつまでも加寿美先生を演じていたら、
香澄自身として匠の身体を味わうことができなくなる。
限られた同窓会タイムを、加寿美先生を演じるだけで終わりにするのは嫌だった。
それに、香澄にとって、高校時代を代表する人物は綾乃であり、史恵であった。
匠の心の中に、もしも実習生の加寿美先生とのことが、
大きな位置を占めているのだとしても、
それはこの際、払拭してしまいたかった。
匠とは今すぐにでも、もう一度セックスがしたい。
そのためには、匠を今の思い込み状態から抜け出させる必要がある。
けれど、それをしてしまえば、
綾乃のことは解決できないままだろう。
今のままの匠が綾乃と結ばれれば、
綾乃のことを高校時代に戻った状態で受け入れそうな気がしたのだ。
(今すぐ綾乃を連れてきたいけれど……。
どうしよう。今から階段に戻るって言っても、
匠君が不自然に思ったらそれで終わりだもの。)
香澄は、綾乃と匠の今までを清算し、
これから先もベストパートナーとして、
二人が生き続けることができる道を模索していた。