生け贄-4
少女の顔が左右に振れる。
拉致されて連れ込まれた先でのやり取りを聞いていたのだから、我が身に降り掛かる厄災を察するには充分であろう。
『イイかあ?俺らにとって世の中≠チてのはなあ、メスを放牧してる《メス牧場》なんだよぉ。美味そうなメスが居たら間引きして姦ってイイ場所なんだ。クククッ…なあ佐藤、オマエさっき見ただろ?俺と田中の〈やり口〉ってヤツをよぉ?』
つい一時間ほど前の出来事だ。
コンビニで酒と食料品を購入した直ぐ後、なんともなしに鈴木は裏道へと箱バンを向かわせるよう佐藤に指示をした。
車一台分しかない狭い道の向こうから、偶然にも遠巻きでも美少女と分かる女子高生がこちらに向かって歩いてくる。
後続車は居ない。
人影も見当たらない。
鈴木と田中はそれぞれにスタンガンを持ち、そして少女の横を徐行しながらすれ違い、一気に襲い掛かった。
……鋭く息を吸い込む音しか少女は発せなかった。
大人の男、二人掛かりで背後から口を塞がれ、首筋と脇腹に電撃を喰らった少女はあっという間に無力化されてしまっていた。
箱バンのリアハッチが開けられ、少女はゴロリと似室に放られる。
その手際の良さと迷いなき連携に佐藤は改めて驚くと共に、やはり逃げ出したりしたなら自分もスタンガンの餌食とされ、凄まじい私刑に曝されるだろうという恐怖を感じていた。
『まだ世の中≠ヘ、コイツが居なくなったって気づいてねえぜ?家族だってそうさ。何も証拠なんて残してねえし、オマエらは安心して楽しめばイイんだ……だろ?』
佐藤は引き攣りの混じる笑みを浮かべていた。
この少女は世の中から忽然として〈消えた〉のだ。
そしてこちらの《世界》に引きずり込まれ、もう二度とあちらの世界には戻れないのだ。
「たッ…助けて…ッ…いやッ…助けて…!」
佐藤は少女の泣き顔を見つめ、そして全身を眺めた。
やや太めの眉が純朴そうな雰囲気を醸し出し、その真っ白な肌が黒髪と薄いピンク色の唇を引き立たせている。
微かな胸の膨らみは実に美味そうであり、華奢な身体の割りには括れて張り出ている臀部は熟れ頃の果実のようだ。
『さあ、何時でも始めてイイぜ?カメラはもう回ってんだからよぉ』
佐藤は少女の鞄を漁り、中から生徒手帳を見つけて取り出した。
そこには〇〇高校一年C組・池野夏美と書いてあった……。