ただのPBじゃない-10
「俺もな、色々調べたんだよ。お前らに負けないぐらい、な。繋がってんのさ。湯島武史から始まった糸は、な。逆から言えば分かりやすいか?高島謙也がサーガこと佐川健吾と繋がり、と言う事は田口徹とも繋がり、さらに湯島武史と繋がる。高島謙也と湯島武史は直接的には関わりはないが、同じ糸では繋がっているんだ。と言う事は上原若菜が追い続け、解決に導いて来た事件は全て3億円事件から繋がっていると言う事だ。」
元治はチラッとマギーを見る。
「高島謙也と佐川健吾が繋がっていたとは知らなかっただろう?」
勝ち誇ったかのようにニコッと笑う。
「…悔しいけど、それがホントなら、知らなかったわ。」
駆け引きなしで悔しさを露わにする。
「そしてもう一つ。勘としてはあのお転婆ねーちゃんの方が鋭かったかも知れないな。現に彼女の恩師が亡くなったのは事故ではなく狙われていたと言う事を突き止め、危険な目に遭ってまで真犯人を追おうとした。俺の事…REVOLUTORの捜査の中で、だ。実にいい勘をしていると思うよ。しかしある事実までは到達しなかったようだな。俺はそのある事実を突き止めた。その点では俺の方が優秀だって事になる。お前ら…、いや警察は大事な事実に到達していない。」
元治がでたらめを言っているようには思えなかった。悔しいが、その事実と言うものを何としても聞きたかった。
「興味深いわね。」
「聞きたいか?」
「ええ。でもヤラせてくれたらとか、そーゆー条件は飲めないけどね?」
元治がそんな条件を突きつけてこない事を分かっていて言った。
「フフフ、間に合ってるから結構だ。無条件で教えてやるよ。なぁ、佐川健吾は日本を支配しようとしていたが、奴の器はそんなにデカくないだろ?頭がいいとも思えない。しかしなぜあそこまで大きな事件を起こして警察を混乱させられたと思う?」
「さぁ…」
佐川の器を疑う話は若菜も言っていた事だ。だがそれ以上何の情報もなかった。マギーはそれが知りたかった。
「簡単だ。日本を支配しようとしていたのは佐川ではなく高島謙也だからだ。」
「…高島謙也が佐川を操っていた、と?」
「ああ。奴は人を使って大事件を起こすのは得意だからな。自らは手を下さずに。3億円事件のようにな。そしてここからが重要だ。なぁ、最近もあっただろう。陰で操り、ある人間をある組織のトップになった案件が。」
「…佐川明子、ね?」
「そう言う事だ。」
「高島謙也と佐川明子が繋がってるのは私達も調べがついて…」
その時、元治はマギーの言葉を遮った。
「そこじゃねぇ!」
まるで出来の悪い子供を叱るかのような苛立った声を張り上げた。マギーは考える。苛立った声を張り上げられて、逆に頭の中がリセットされたような気がした。
(何?何なの…?…あっ!!)
マギーの中である物が繋がった。それは何故今までそこに着目しなかったのかと思えるものであった。それに気付いたマギーの顔を見て元治はニコッと笑った。
「佐川健吾と佐川明子は…兄妹…って事…!?」
元治はサラッと答える。
「そう言う事だ。」
その衝撃的な答えに、マギーも華英も言葉を失うぐらいに衝撃を受けたのであった。