娘の音-1
【娘の音】
「ごめん。前通るね」
居間のソファーに座り、テレビを見ていた大輔の前を、娘の優希(ゆき)が横切った。
「おっ、おう」
優希の声に応えた大輔は、通り過ぎる尻をちらりと目で追った。
こんな風に、最近女らしくなった優希の尻を目で追うことが多くなってきた。
もちろん、思春期の娘には気づかれないように、注意を払っていた。
優希が台所に立っているときはチャンスだ。優希が料理に集中しているときは、むき出しの太ももに遠慮なく視線を注げるからだ。
大輔がそんな視線を向けていることも知らず、優希は太ももがむき出しの短パンを、部屋着として愛用していた。
(大きくなったものだ)
いけないと思いつつ、ムチムチとした太ももを見ながら、その裸体を想像した。しばらく女を抱いていないからなおさらだった。
大輔が離婚したとき、優希は小学5年生だった。元妻の優花(ゆうか)の浮気が原因だったため、大輔が親権を持つことに優花は同意し、大輔になついていた優希もそれに賛成してくれた。
離婚後、しばらくして優希が初潮を迎えた。そのときには慌てたが、元妻に頼るのもシャクなので、隣の市に住む妹に助け船を出して事なきを得た。
お互いに気まずい思いをしたが、こんなときは子供でも女が強いもんだ。2、3日すると、優希の方が元の雰囲気に戻してくれた。
しかし、少しだけ変化があった。それまで一緒に入っていた風呂が別々になったことと、妹が優希を連れ出して買ってきたブラジャーが、物干しに干され始めたことだった。
こうして、父娘が2人で暮らし始めて6年が経ち、優希は高校2年生になっていた。
「あっ、いけない。おネギ買うのを忘れちゃった。お父さん、ちょっと買ってくるから、お風呂先に済ませといて」
この日の夕食は優希の当番だった。
「待ってるからいいよ」
風呂は食事を済ませてから入るのが常だ。
「ついでに本屋にも寄りたいから、ちょっと時間がかかるよ」
読書家の優希の本選びは時間が掛かる。
「わかった。気をつけてな」
優希を送り出した大輔は、湯が溜まるのを待つ間、7時のニュースを見ていたが、その内容が気になり、少し入るのが遅くなってしまった。
浴室に入った大輔が掛け湯をしようとしたときだった。優希が、玄関からドタバタとトイレに駆け込む音がした。
(よっぽど我慢してたんだな)
ふっと表情を弛めた大輔だったが、直後にその顔が固まった。
シャーッ!
勢いよく放出される迸りの音が、壁を通して微かに聞こえてきたからだ。
「こ、これは…」
大輔は慌てて壁に耳を付けると、その音がハッキリと聞こえてきた。長く続く放出音。否が応でも、その迸りが放たれる部位を想像してしまう。見る見るうちに大輔の表情が、だらしなく弛んでいった。
『ふう…』
壁越しに満足げな優希のため息が聞こえた。
(終わったのか…)
その静寂を物寂しく感じた大輔は、無意識に股間に手を伸ばした。
勃起していた。
カラカラとトイレットペーパーを巻く音が響いた。