デスカンパニー来世部〜輪廻の端〜-2
彼はなかなかこの来世へ向かう道へと現われなかった。
まず死を受け入れないかぎり、大地からの呪縛から解き放たれない。
死を認める事、受け入れる事こそが死の始まりであり序曲である。
この事実に苦悩し憎しみ悲しみ怒りのた打ち廻り、苦しみと解け合う。
よく俗人が見るという霊体が恨めしそうなのもこの葛藤の故である。
スベルクも己に起きた変化に徐々に気付きだしていた。
しかし
「ちがう!おれは生きているんだ!」
と否定し続けた。
否定は自らの皮膚を焼き付けるような痛みを伴い藻掻きながら無限の中を彷徨った。
彷徨いながら、浮かぶのは愛する家族の事ばかりである。
途切れた絆の残像ばかりを追い求め、また苦しむ。
次第に
段々と
彼から抗う力は失われていった。
それは変化のない無限の中で彼が一つの決心をしたからであった。
死の受理。
彼はとうとう認めた。
自分が息絶えた事に。
そして大地から解き放たれた彼は、一目散に我が家へ帰っていった。
カラダのない彼には苦もなく空間移動ができる。
目の前に恋い焦がれた我が家があった。
扉を擦り抜け入る。
懐かしい匂い。
しかし、
音がなかった。
家族は彼の死に打ち拉がれていた。
愛する者達の涙がその場に彼を留まらせた。
いつまでも。
彼にはそれだけでも満足だった。
だが、
時は経ち、人の心から彼はゆっくりと
確実に
消えていった。
消える。
消える痛み。
彼の妻は違う男を愛し始め、彼女の心からも次第に彼は消えていった。
無力感。
次第に此処は彼の居場所ではなくなった。
そして、ようやく
デスカンパニー来世担当の前に彼は現われた。
SANSEは彼に生まれ変わりの、輪廻の説明をした。
代償は彼の現世の記憶・意識。
スベルクはもう一度だけ家族の下へ行きたいと懇願した。
すでにスベルクには時間が残されていない事もSANSEは伝えた。
デスタイマーが指す残り時間は2時間。
死を受理してから一定の時間が経つと輪廻はおろかその繋がりも断たれてしまうという。
彼は急いで家に戻り、妻のそばまで浮かびあがり、耳元で囁いた。
「おれはこれから旅に出る。
すまなかった。
きみを幸せにしてやれなかった。
悲しませてばかりだった。僕がきみの記憶から薄れていっても、例え無くなってしまってもきみは幸せになってくれ。
愛してるよ。
ありがとう。」
涙で言葉にならなかった。痛みと悲しみと淋しさの中で彼は崩れ墜ちた。
彼女は優しい顔をしながら
「スベルク。
いるのね。
お別れを言いにきたのかしら。
私が愛した人。
いつまでもあなたが消えるわけないでしょう。
だって……