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デスカンパニー
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デスカンパニー-1

デスカンパニーとは死を司る仕事を主に行っている組織である。
人は生まれてから死を直視せずに遠い存在、忌むべき存在として生きてきている。
死を司る組織の一員である東城もその例外ではなかった。
これから話す話は東城と死とのお話しである。
東城は組織に入ったばかりの21才の気の弱い男である。
もちろん、死を司るデスカンパニーには似付かわしくない性分である。
今日もエージェントからの仕事をさぼりタバコをふかしていた。
「どうしてこんなヤバい仕事しなきゃいけないんだ……」
東城はため息混じりにタバコの煙を吐き出した。
今回の仕事は新人皆がまずやらなければならない仕事の一つである“死を捕らえる”ことである。
もちろん、死には形がない。目にも見えない。触ることすら、感じることすらできない。
だから、デスカンパニーでは、デスタイマーという余命の測れる砂時計でまず身近な者の余命を知ることからまず仕事が始まるのである。
しかもターゲットは自分である。
しかし、東城は死への恐れからデスタイマーのスイッチを入れることさえできなかった。
もしも残りわずかだったらどうしょう…………
一番知りたくない自分の死期を知ることの残酷さに押し潰されそうになり、東城はデスタイマーを何度も捨てようともしたのだった。
なぜ、自分の死期を知らなくてはならないのか、そのときの東城にはわからなかった。
そして、入社してから東城は精神的にも追い詰められてしまったのだった。
もちろんのこと、ノルマクリアが社員の義務である。デスタイマーの第一関門を突破しないかぎり、ココでは先はなかった。
ある日東城は上司の大駒に呼び出されていた。 「東城!!おまえはまだデスタイマーをクリアしてないのか!」
厳しい口調で叱責される東城は逃げたしたい気持ちでいっぱいだった。
「明日までにどうするのか決めろ!さもなくばおまえなんぞクビだ!」
確かにこのままでは組織の厄介者になってしまう。いつまでも逃げ回るわけにもいかない。
東城はその夜恐る恐るスイッチを入れてみた。
カチ………ガタンガタン
砂はサラサラと大量に流れおちて東城が最も恐れていた結果となった。残量からの余命判定という講義で学んだ情報によると、あと2日分の砂しか残ってなかった。
おれはあと2日で死ぬのか

悲しみ、憤り、恐怖のあまり東城は嘔吐と涙まじりのまま床に崩れていった。

あと2日。今までおれは何をしてきたんだろう? 無意味に無駄に毎日を浪費して、仕事に追われてただただ過ごしてしまった日々を悔やんだ。
死を見つめることよりもあと2日の我が人生へ落胆するばかりで、東城は動けなかった。
あと2日どう生きようか?遠い島へ逃げようか?それともいつもの生活をしようか?と迷いで心は乱れた。
一番こわいのは、自分が自分であるという認識がなくなってしまうことだ。
記憶も思い出も自我も真っ白に消え去ってしまう。
生きていた証とともに。
おれがなくなるのか?
東城は初めて死す運命を痛感した。
生きることの影のように、鏡に映る己のように常に死はつきまとってきたはずなのに!
人は失ってみて今を痛感するんだと思った。
死はすべてを無に還すものだ。思い出も家族も愛も財産も………東城は電車の中でそんなことを考えていたのだった。
ちょうど明日から2日休みだった。
東城はもう数年も帰っていなかった実家へと帰ることにした。
何故帰る決意をしたのかは自分でもわからない。喧嘩別れした両親になんて会いたくなかった今までの自分を少し悔やんだ。
重い足取りで家路につく。ドアの前まで辿り着いたが、その一歩が踏み出せなかった。
懐かしい香りがする。両親が好きな花の香りに包まれていた。
なんの花かなんて興味もなかった。
その時
「誠一じゃないの!?」
と母が庭から顔を出した。
ことばにつまっていた東城を母はやさしく迎えてくれた。
母に押されながら家の中に入ると父の姿もあった。
「バカもんが!!!どれだけ心配したと思っとんだ!」
父は怒鳴りちらしたが、涙で目頭が熱くなっていた。初めてみる父の涙だった。


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