真奈美の過激な体験 2 -1
真奈美は真央の言葉を遮るようにして、激しく腰を打ち付け始めた。
しかし、真央はそんな真奈美の身体を支えると、上体を起こさせてその顔を見つめた。
「ううん。真奈美ちゃんって、きっと、そんな子なのよ。
お父さんにも、お母さんにも、
遠慮してるんなんていうところを一切見せないで、
自分ひとりで考え抜いて、
みんなのいいように、みんなが楽しいようにって思って、
気が付いたら遠慮しちゃって、
自分でも我慢してるなんて思ってなくって、
自分のしたいようにしてきていない子なのよ。
ね?真奈美ちゃん。
本当はお兄ちゃんと、
孝志お兄ちゃんと、したいんだよね?
あっちの部屋に行って、お母さんに代わってもらって、
お兄ちゃんとしたいんでしょ?」
「えっ?真奈美、真央お姉ちゃんと、こうやっているだけで楽しいよ。
それに、お母さんが孝志お兄ちゃんと楽しそうにしているのも、
ちっともいやじゃないし……。」
「真奈美ちゃん。いっつもそうやって、我慢してない?
ねえ。本当のこと、言って。
あのね。わたしたち、もうすぐ、帰らなきゃいけないんだよ。
お母さんが満足するまで待っていたら、時間が無くなっちゃうんだよ?」
「うん。知ってるよ。真央お姉ちゃんも、孝志お兄ちゃんも、
明日まではいられないって。」
「いいの?お兄ちゃんと楽しい時間、過ごさなくて、本当にいいの?」
「だって……。
だって、みんなが楽しいのが一番でしょ?
お父さんは真央お姉ちゃんと一杯楽しんだし、
お母さんだって、孝志兄ちゃんともっといっぱい、したみたいだし。
みんな楽しかったんだから、それで……。」
「真奈美ちゃんは?真奈美ちゃんはどうなの?」
「真奈美?真奈美は……。」
「真奈美ちゃんはちゃんと楽しんだの?」
「……食べ過ぎちゃって、おなかが痛くなったのは真奈美のせいだし……。
だから、おトイレに行っちゃったでしょ?
真奈美を待っている時間、
孝志お兄ちゃんがお母さんと楽しく過ごすのは当たり前だし……。」
「いいの?真奈美ちゃん。
お母さんが楽しかったから、真奈美ちゃんは満足なの?
わたしたち、本当に帰っちゃうんだよ?」
「うん。それは……。寂しいし……。
真奈美……明日もずっと…一緒…にいられると…思ってたし……。
でも…真央お姉ちゃ…んた…ちが、
お家に帰って……xxお父さん…と仲…wz直りできるのが一番だし……ww。」
真奈美はそのまま泣き出した。
真奈美にしては珍しいことだった。
真奈美自身、泣き出してしまった自分に驚いていた。
しかし、涙が次から次へと溢れ出てきて、止まりそうもなかった。
雅和が真奈美を抱き寄せ、身体の上から降ろすと、
真奈美は、とうとう小さな子どものように、大声で泣き始めた。
「xgxgやだよ〜www。孝志お兄ちゃんとサヨナラしたくないよ〜。」
雅和も真央も、どうすることもできずに、そんな真奈美を見つめていた。
孝志と香澄が真奈美たちの部屋に入ってきたのはそんなタイミングだった。
孝志と別れたくないと言って泣いている真奈美の、涙の本当の理由がわかったのだろう。
孝志も香澄も、ばつの悪そうな顔をして真奈美を見ている。
雅和が必死になだめてはいるが、とても収まりそうになかった。
真央が孝志を手招きし、厳しい顔で何かささやいた。
真央に何か言われた孝志は真奈美のそばに行き、しきりに謝っているようだが、
真奈美には一向に泣き止む気配はなかった。
史恵の息子の利彦が特別室へ顔を出したのはそんなタイミングだった。
松本兄妹へ、史恵からの伝言を伝えに来たのだった。
正直、香澄も雅和もホッとした。
利彦の話によれば、
夕方から連続的に降り出したゲリラ豪雨のため、土砂崩れが起き、
この旅館の最寄り駅までの鉄道が上下線とも不通になったというものだった。
復旧の見通しは今のところ立っておらず、
いずれにしても明日の朝、駅までは旅館の車で送るとしても、
その先どうなるかはわからないということだった。
「さっきのニュースでは、明日の朝から復旧工事が始まるということです。
昼ごろになれば少しは先の見通しも立つと思うのですが、それまでは何とも……。」
「あら、じゃあ、明日の朝、早く出発しても無駄っていうこと?
ねえ、お兄ちゃん。電車が走っていないんじゃ、仕方ないわよね。」
真央が喜びを抑えながら言った。
「ああ。お父さんには早く会って話がしたいけれど……。
電車が復旧しないことには、な。」
真奈美は何のことかよくわかっていないようで、
時折しゃくりあげながら、それでも、じっと孝志の顔と利彦の顔を交互に見ている。
「ですから、明日の昼過ぎまでこちらにいらっしゃって、
電車の状況がわかった時点で今後どうするかを、
また相談させていただければと思いまして……。
場合によっては、車で、電車が通っている駅までお送りすることも、
できるかと思います。
いずれにしても、明日早朝の出発は無しということで……。」
「どうする?お兄ちゃん。」
「どうするもこうするも、仕方ないだろ?」
「正直申し上げますと、電車の方の復旧には2,3日はかかるんじゃないかと……。」
「そんなに?」
「どっちにしても、明日の朝、お父さんに電話だけでもした方がいいな。」
「じゃあ、今夜は?」
「……だな。」
「うん。」
真央と孝志は互いにうなずくと、そのまま笑顔を真奈美の方へ向けた。
「えっ?どうなったの?
えっ?どうするの?どうするの?」
孝志と真央の笑顔に真奈美はようやく泣き止み、孝志と真央に声をかけた。