ケンジの人生-1
家を叩き出されたケンジは、とりあえず職を探そうとしたが、住所不定で連絡手段もないとあって、まともなところはどこも相手にしてくれなかった。
やっと決まったのは、ピンサロのボーイであった。
寮があるのは幸いだったが、仕事は昼12時から夜中12時まで、休みはほとんどなかった。
ケンジは風俗店の事を殆ど知らなかった。
だから、隣がまる見えのソファで、下着姿で初対面の客と舌を絡め合い、性器を触らせて興奮させたところで勃起した男根を舐め回し、口の中に射精する様子を見たときには、唖然とした。
「下はだめ、生理だから」
「なんだよ、指名しないといつも生理かよ」
「お願い分かって…本当はオマンコいじりで気持ちよくしてほしいの…指名お願い…気持ちよくなろうよ…」
「久々で溜まってるんだ、全部飲んでくれる?」
「もう本当にエッチなんだから…これからも指名してくれるなら飲んであげる…お尻の穴も好きでしょう?色々してあげる…どうする?」
「マンコの臭い匂いが嗅ぎたいな、四つん這いになって」
「酷い、その言い方…でも今日は色々いじられたから気持ちよくってオマンコ汁たくさん出しちゃった。シックス・ナインしようか、おちんぽ気持ちよくしてあげる。」
「マンコで擦って出してくれよ」
「ごめんね〜それは禁止なの。本当はクリにあたって気持ちいいからしてあげたいんだけど…お尻の割れ目でだしてあげる。」
あちこちでそんな会話がかわされ、常に店内には生臭い精液の臭いと、それを打ち消すための消臭剤の匂いが充満していた。
舌を絡めてキスをするときの粘った音や、男根を強く吸うときのチッチッという音、射精した男のうめき声、性器を舐められてあえぐ女の声、充血した女の性器に指が出入りするクチャクチャという音があちこちから聞こえた。
女は無数の男根に奉仕し、精液を受け止めた舌と唇で男たちを喜ばせた。
大きく勃起した男根や乳首、肛門への愛撫で男を刺激し、更に下品なうめき声で男たちを興奮させ、大量の射精を促した。
そして男たちは、低いソファー越しにお互い相手の様子を覗き込み、さらに興奮を高めていた。
キャストは精液を口で受け止め、時には喉を鳴らして飲み、その後簡単にウガイをしただけで次の男のところに行くと、またディープキスをしているのである。
客の無神経さも、衛生観念が欠落したキャストにも驚いたが、それも最初だけで、受付から男たちの爪のチェック、精液をたっぷり含んだおしぼりの回収など、毎日忙しく働き、寮に帰ると寝るだけの日々が続いた。
そして頭に去来するのは、友梨奈のことであった。
豊かな胸と尻、美しい明るい笑顔、細く美しい指。何度も思い返しては、深い悲しみに陥るのであった。
ある日、意を決したケンジは、早朝に寮を出た。
友梨奈に詫びを入れ、また二人で新しい生活を始めようと考えたのである。
山奥までバスで行き徒歩で自宅傍まで来たが、一体どうやって友梨奈に合えば良いのかと考え、足を止めた。
何も考えず、勢いだけでここまできてしまったが、もしタケシに見つかったら今度こそただでは済まないかもしれない。
コソコソ身を隠して自宅を覗き込んでみたが、外側からでは何もわからない。まるで泥棒のように足音を忍ばせ、裏口から中を覗きこんでみた
古く、薄暗い家の様子は相変わらずであったが、奥から何か声がするのがわかった。
ケンジは意を決して声のする方へ向かった。