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『茜色の空に』
【女性向け 官能小説】

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『茜色の空に、始まり』-4

電車に2時間程揺られて降りると、そこは緑豊かな谷あいの静かな街、というか村だった。
そこから更に歩く事20分程、目的地である宿泊施設に到着した。

宿泊施設、と言っても、ホテルや旅館といった大層なものではなく、廃校になった小学校を手直ししただけものだった。
しかし入ってみると、なかなかどうして、綺麗に改装されており、それでいて学校だった名残りも上手く残されてノスタルジーを誘う造りになっていた。

それぞれが割り当てられた部屋に荷物を置きに向かい、思い思いに部屋でくつろいでいると、ふと、良い匂いが鼻をくすぐる。
カレーの匂いだ。

そういやこの後昼食だったっけ、そんな事を同部屋の連中と話していると、校内放送よろしく、ピンポンパンポーン、と、チャイムの音が響き渡る。

『皆さんお疲れ様でしたー。ご飯が出来たのでホールに集まって下さーい。』
この声は確か、明香さんと同学年の竹下みのりさん?そういや明香さんもみのりさんも電車には乗ってなかった筈だが。

不思議に思いながらもホールに向かうと、既に食事の準備がされていた。
次に目に入ったのは、エプロンをして大きな鍋からカレーをよそう、明香さんの姿。

オフホワイトのシンプルなエプロンを纏った明香さんにドキッとしつつも、空いた席に座る。

どうやら明香さんやみのりさん達は、先にこっちに来てこうして昼食の用意をしてくれていたみたいである。

カレーは勿論美味しく、皆あっと言う間に平らげた。

その後は自由時間だったので、僕は学校の中を探険していた。小学校そのまんまのトイレ、教室の一部屋分を使った大きな浴室、そう大きくない体育館。
どれも懐かしく、そして新鮮だった。

そして校舎の隅の短い数段の階段を降りると、そこは給食室の様だった。水を流す音が聞こえる。
ドアを開けると、そこには、まだエプロンを付けて、沢山の洗い物を片付ける明香さんが居た。一人で。

「あ、しんちゃん。どうしたの?」
僕に気付いた明香さんは、食器を洗う作業を続けながら、顔だけこちらに向けて話し掛ける。

そう言えば僕はいつの間にか『しんちゃん』と呼ばれる様になっていた。
同期生の女の子が発端らしいが、高校の時は、女子からは名字でしか呼ばれていなかったので、正直気恥ずかしい。

「探険してて。こん中。手伝いましょうか?」
「ううん、大丈夫よ。探険、したら?」
にっこり微笑む。

「もうほとんど回ってみたし。こんな小さいトコ、あっという間ですよ。」
「そりゃそうね。」
ふふ、と柔らかに微笑む明香さんに、急にドキドキしてしまって、僕は少し慌てる。

「あ、えっと、みのりさんとかは?」
「みのりは晩ご飯の買い出し。蓮くんが車で来てるから、乗せて行って貰って。」

「じゃあ一人で大変じゃないですか。僕、手伝います。」
言いながら僕は腕まくりをしてサッサと明香さんの隣に立ち、泡だらけの食器をすすぎ始める。


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