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『茜色の空に』
【女性向け 官能小説】

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『茜色の空に、始まり』-3

「あー、私ら、こっちにしてるから、ビールもういいですよ。」
明香さんが隣から僕の代わりに答えてくれる。こっち?

「明香ちゃん、もう日本酒飲ませてんの?流石だねぇ。秦一、気を付けろぉ。俺らでも明香ちゃんの酒豪っぷりにはかなわないからな。」
余計な事を吹き込まないで下さい、と明香さんに笑顔でとがめられた先輩はケタケタ笑いながら他の新入生の元へ去って行く。

明香さんを見ると、明香さんもこちらを向いて、いたずらっ子の様な笑みを浮かべる。
「飲む?」
明香さんの手には、小さな透明のコップに注がれた透明の液体。

「え、」
思わず躊躇していると、明香さんはふふ、と笑って、自分の前においてあるグラスを指指し、
「こっちは冷酒だけど、これは只のお水。酔い覚ましにどうぞ。」
と、周りに聞こえない様に僕の顔にその小さな顔を近付けて囁いた。

僕はその至近距離にドキドキしてしまうが、きっとお酒のせいで既に顔は赤いので、明香さんにはその事は気付かれてない筈だ。

「有難うございます。」
僕は素直にお礼を言ってから、明香さんが手渡してくれたお冷やを一気に飲み干す。
少し生き返った様になる。

そんな僕の様子を見てから、明香さんは自分のグラスの、恐らく本当にお酒なんだろう、透明の液体を少し流し込む。

「明香さん、強いんですね。」
明香さんと日本酒って、意外な取り合わせ。素直にそう言うと、明香さんは又、ふふふ、と柔らかく微笑んで、
「ビールとかチューハイとかよりもね、こっちんが好きかな。変かしらね。」
と、答える。

僕は、いけない事言ってしまったかな、でも本当に、日本酒よりもカクテルとかチューハイって感じだよな、などと酔った頭でグルグル考えたが、明香さんは気にする素振りも見せず、
「じゃあ、あんま無理しないでね。」
と、日本酒の入った自分のグラスを持って立ち上がろうとする。

「あっ、明香さん、有難うございましたっ。お水っ。」
慌ててお礼を言う僕に、明香さんは先程のいたずらっ子の様な笑顔に、人さし指を立てて、しーっ、と言う仕種をしてからふわりと立ち上がり、去って行った。

よく見ると、明香さんはそうやって飲まされ過ぎた新入生にこっそりお冷やを渡して回っていたみたいだ。

その日はそれから、自然に明香さんに目が向いてしまっていた。
結局明香さんの助け舟も虚しく、僕は先輩達に飲まされ、すっかり潰れてしまったのだが。


それから程なく、新しい生活にも大分慣れ、4月も終わろうとする頃、うちの科の研究室の掲示板に、『新入生歓迎合宿の案内』なる紙が貼り出されていた。
どうやらこれも新入生は全員強制参加の様だ。

貼り紙の内容を見ると、時は5月のGW、2泊3日、場所は大学が所有する宿泊施設、内容は飲み会に散策に魚釣りにキャンプファイヤー、と、どこら辺が「合宿」なのかと突っ込みたくなる様なものだった。

呆れつつも、特にGWの予定も無かった一人暮らしの僕としては、暇を持て余す事がなさそうで有り難く感じた。


そして合宿当日の早朝。
参加者全員が駅に集合し、先輩達の先導で目的地に向かう。


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