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『茜色の空に』
【女性向け 官能小説】

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『茜色の空に、始まり』-2

オリエンテーリングはその後少しの間、お菓子を食べながらの歓談となり、それから解散となった。


翌週には講義も始まったが、教養科目ばかりの1年生の僕が、3年生である明香さんを始めとする先輩達と顔を合わせる事は無かった。
だが、慣れない大学生活、慣れない一人暮らしにそんな事すらも忘れていた。


そして金曜日。
ここは大学から程近い居酒屋。
新入生歓迎会と称された飲み会に僕は参加していた。

お酒を飲むなんて、実は初めてだったりする僕は、先輩達の飲めや歌えやの大騒ぎに圧倒されてしまっていた。
グラスを少し空けるとすぐに、入れ代わり立ち代わり先輩がビールの入ったピッチャーを持ってやって来る。
皆大分アルコールが回っている。僕もすっかり酔ってしまっていた。

「大丈夫?」
突然、優しい声が僕の隣から聞こえた。明香さんだった。

「え?」
酔いの回っている僕は間抜けな返事をしてしまう。確か最初の乾杯の音頭の時には明香さんはまだ来ていなかった筈だ。

「ビックリするでしょう。こんなで。無理しないでね。」
涼やかなその様子からすると、きっと来てからそう時間は経ってないのだろう。

僕は、酔っているのを悟られてしまったのが何だか恥ずかしくて、
「いや、全然大丈夫ですっ。」
と、あんまり大丈夫ではなかったがそう答える。

そこへ、高志が、
「お、秦一〜、明香さーん。飲んでますか〜?」
と、明らかに酔った様子でふらふらとやって来た。向こうの方で相当飲まされた様だ。

「うんうん。有難うね。こうちゃん大丈夫?」
明香さんは動じる事無く、笑顔で答える。
そういや高志は、オリエンテーリングの自己紹介で、自分の事は「こうちゃん」と呼んでくれ、但し女性限定で、みたいな事を言っていたっけ。

「あ〜、あんま大丈夫じゃないっス〜。凄いっスね〜。」
素直に酔いを認める高志。

「毎年結構こんな感じよ。私は去年の歓迎会には来てないけどね、私が一年の時のも凄かったから。」
「へ〜。」
「高校出たばっかの一年に遠慮無しに飲ませるからねー、うちの科は。二人共無理しないでね。」

と、明香さんが言うそばから、
「高志〜!こっち戻って来い〜!」
と、向こうで先輩の怒鳴り声。高志は人懐っこい性格からか、先輩からも可愛がられる様だ。
「は〜い、只今あ。」
おどけながら声のする方へ戻って行く。

それを明香さんは苦笑しながら見送る。そんな表情も可愛いな、などとボーッとしながら見ていると、
「秦一、グラス空じゃん、飲めよ。」
と、別の先輩がビールを勧めて来た。確かこの人は4年生。


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