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『茜色の空に』
【女性向け 官能小説】

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『茜色の空に、始まり』-1

教室に入ると、既に上級生の先輩達が待ち構えていた。
黒板には、『ご入学おめでとう!新入生歓迎オリエンテーリング』と大きく書かれている。

今日は大学の入学式の翌日。講義なんかは勿論まだあるはずもなく、僕、佐藤秦一を含むこの学科の新入学生二十数名は、オリエンテーリングが行われるという教室に集まっていた。

新入生と在学生が向かい合う形で机が並べられており、僕達一年生は空いた席に思い思いに座る。
机にはお菓子やジュースが並べられている。

全員が着席するのを見届けると、男の先輩の一人が立ち上がって、
「んじゃー、始めまーす。えー。新入生の皆さん、入学おめでとう!今日は、○○学科全体のオリエンテーリングです。うちの科は人数が少ないので、是非、交流を深めましょう!」
と、挨拶を始めた。

高校の時よりやや広い程度の教室を見渡すと、全員で50〜60名位だろうか。理系の学科の為、男の方が圧倒的に多い。上級生みんながみんな来ている訳ではないのだろうが、上級生の側はひしめき合っていていて、立ったままの先輩もいる。

ふと、片隅に佇む一人の女の人に目が留まる。

大きな瞳。色白な肌。肩までの長さのサラサラの黒髪。そう高くない背丈に細くて華奢な身体。白のブラウスにジーンズ。
司会の先輩が時折挟む冗談に柔らかく微笑んでいる。

可愛い人だな。そう思い、僕はその人から視線を外す事が出来なかった。

「・・・。じゃ、先に一年生から。学籍番号順にでも。」
ふと我に帰る。どうやら自己紹介をしないといけないらしい。

「何言えって?」
声を潜めて、隣に座る同級生の男に聞く。確か、昨日の入学式の後の説明会でも隣になった、小山、だったか。

「名前と出身地と、何て呼べばいいか、あとは適当にだと。」
小山は同じ様に声を小さくして答えてくれた。

みんな心持ち緊張しながらも、そつなく自己紹介を済ましていく。
僕の隣の男は小山高志というらしい。軽口を叩いて教室内の笑いを誘う。

次は僕の番だ。大勢の人前で話をするのは得意ではないので、小山の様に気の利いた事を言えるはずもなく、名前と出身地を言った後、
「秦一、で良いです。宜しくお願いします」
とだけ言って着席した。

一年が全員自己紹介し終わると、向かいに座る先輩達が自己紹介を始めた。
先輩達は皆饒舌で、面白可笑しく話をする。

そうして、先程僕が思わず見つめてしまったその人の番になり、彼女は、
「村上明香です。3年生です。出身は○○です。皆からは普通に明香、と呼ばれています。宜しくお願いします。」
と、涼やかな声で短く自己紹介をする。

3年かあ。2年かと思った。出身地は僕の隣の県だ。何となく少し嬉しい。

そんな事を考えていると、司会の先輩が、
「えー、2年以上は他にもこの倍位いますが、他の連中はこれから歓迎会やら合宿やらで会う機会があると思います。宜しく。で、その歓迎会は、来週金曜日、一年生は強制参加です。」

合宿って何だ。合宿って。うちの学科は体育会系か。いやいや理系だ。
どうやらこの学科はお祭り好きらしい。配られたプリントを見ると、一年間通して何だかんだと行事がある。


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