家族旅行での出来事 1日目 夜の狂宴 その1-5
「うん。だって、お母さん、
昔、あのおばちゃんと、ギュッとしたこと、あるんでしょ?」
「真奈美ちゃん……。」
「真奈美にはよくわからないけれど、
だったら余計に、懐かしいっていう気持ちの中に、
昔みたいにしたいなっていうのがきっとあるんだと思うんだ。
だから、お母さん、きっとあの人とギュッってしたいんだろうなって。
ね?お父さん。」
「あ、ああ。そうだな。きっとそうなんだろうな。
香澄。いいよ。昔を懐かしむ。
その一つが身体の繋がりであってもいいじゃないか。
そのためには二人きりの方がいいんだろ?ボクと真奈美に気兼ねする必要はないよ。」
(真奈美はわたしがどんな高校時代を過ごしたか、なんとなくわかっているんだわ。
そう、きっと、なんとなく……。)
香澄は真奈美の、自分を見つめる顔を見てそう悟った。
「あなた。ありがとう。あのね……。でもね……。」
「なんだ。まだあるのかい?」
「ええ。確かに、史恵と……。
二人きりになりたいのは確かよ。でも、本音を言えば……。」
「あっ。わかった。あのお兄ちゃんともギュッとしたいんでしょ?」
「ま、真奈美ちゃん……。」
(やだ、真奈美ったら……。
わたしがあの男の人に興味をもっていることまでわかっているなんて……。
もしかしたら、妹さんの喘ぎ声を聞きながら、
お風呂の中でオナニーしていたことも知っているのかもしれない……。)
真奈美があっけらかんとして言ったのに比べ、夫の驚き方は少し大袈裟だった。
「そ、そうなのか?あの、孝志君とも……。」
「……ええ。そう、なの。せっかくの……。機会、だし……。」
「興味がないわけじゃない、って言うところかな。」
「ええ。あなたの言う通り。わたしはそんな女、なの。」
「いいじゃないか。そんな女で。」
「あなた。」
「君があの松本という青年に抱かれてみたいと思ったのは正解だと思うよ。
さっき、一緒に風呂に入った時に確かめた。
なかなかのものだったぞ。
それだけじゃない。指のテクニックが絶品のようだ。」
「指のテクニック?あなた、見たの?」
「ああ。妹さん、真央ちゃんが、愛撫されているところをね。
どんな体勢からでも的確に性感帯を捉えて刺激を与えていたよ。」
「あなたが舐めていたわけじゃないのね?」
「いや。ボクが舐めている隙間を彼の指が埋めていた、と言えばいいのかな。
ボクのクンニを邪魔することなく、
妹さんのクリトリスや割れ目、時にはアナルの周りや乳首まで。
とにかく休みなしに動き回るんだ。
それも両手を使って。
10本の指を休めさせることがない。
ボクにはとても真似できないな。」
「お父さん。指のテクニックって、そんなに凄いの?」
「ああ、真奈美はあまり指で刺激されたことはないのかな。
敏明君も征爾さんもメインはペニスだからね。」
「普通、セックスってペニスが一番なんじゃないの?」
「ああ。確かにペニスでの刺激はセックスの醍醐味だ。
ただ、人によっては……。
あ、これは男に限らず、女に限らずだけれども。
ペニスによる刺激を一番得意とする男もいる。
ペニスによる刺激が一番感じるという女性もいる。
でも、男女関係なく、中には指が一番、口が一番という人もいる。
それぞれ好みや得意なものがあるんだ。」
香澄は聞きながら思った。
(ああ、これが父娘の会話だなんて……。
互いによく理解し合っているし、仲もいい。
周りから見たら文句のつけようがないところだけれど、
話題がセックスなんて……。
普通の人たちにはなかなか理解はしてもらえないわ。)
香澄の思いとは関係なく、真奈美と夫の楽しそうな会話はさらに続いた。
「真奈美は手でするよりも、お口でする方が好きだし、得意かな。」
「ああ。敏明君もきっとそうなんだろう。
指でするよりも、舌先でする方が好きなのだろうし、
得意なのかもしれないね。」
「でも、あのお兄ちゃんは、指が得意、ってこと?」
「ああ。当然、相手によるとは思うけれどね。」
互いの経験を交えながら楽しそうにセックスについて会話する父娘。
香澄もその輪の中に入りたくなって口をはさんだ。
「わたしは……。ううん。
わたしも、指での刺激はあまりされたことがないかも知れないわ。」
「ああ。ボクもどちらかと言うと、舐めるのが好きだからね。」
「ええ。わたしもいきなり舐められるのが好きだし、感じるわ。
若いころから、相手の人が舐めるのが好きだったのもあるのかもしれないけれど。」
さりげなく、夫と知り合う前の経験まで話すことで、
香澄は自分の過去をごく当たり前のものと思おうとすると同時に、
娘である真奈美に告白していたのだ。
香澄の意図に気づいてか、夫は言った。
「一番最初の体験も重要かもしれないね。」
「一番最初?」
「ああ。初体験で、どんな愛撫をされて、どの愛撫が一番感じたかっていう経験が、
後々まで影響しているのかもしれないよ。」
「あ、じゃあ、お母さんの初めての相手の人は舐めるのが好きだったんだ。」
「ああ。きっとそうなんだろうね。」
(真奈美ちゃんて、こういうことに関しては敏感に反応するのね。
雅和さんも妙に納得しちゃって……。
そっか。でも、わたしが最初に舐められたのは……。
匠君?あ、違うかも……。豊君?
ああ。でも、懐かしい……。
そっか。あの時の経験が今にも続いているって言うことね。)
香澄は真奈美の話を聞きながら、自分の初めての時を思い出していた。
(今頃、匠君、どこでどうしているのかしら……。)