想[7]-2
『友達記念日』から一ヵ月経った。
「また昨日もメールしたの?」
「うん」
「いぃなぁ〜!」
未宇は「ずるい、ずるい」と言いながら地団駄を踏んでいる。
「まあ、まあ」
「友達になっちゃって、全く…。あたしも、お近付きになりたいっ!」
「彼氏いるじゃん」
結局、未宇はあの白い車の人と付き合うことになったらしい。
「暁寿いるじゃん」
ぶすっとした顔の未宇。
「うん、けど別にいいんだって」
「どういうこと?」
「未宇が友達だと思ってるのに、束縛なんてしないよ!信じてるからな♪」
私は暁寿の真似をした。相変わらず暁寿は余裕…。
「ふーん。ドライだねぇ、君たちは」
そう、暁寿は私の男友達に対してすごくドライ。
「まっ、付き合って二年にもなるとそんなもんなのかな」
そんなもんなのかもね。私も最近、そんな暁寿の態度に何も感じなくなってきた。前は、寂しかったけれど、もう慣れたみたい。ドライだなぁ。
「どんなメールしてんの?こ・う・ご・君・と♪」
未宇は目を輝かせて私に擦り寄ってくる。
そのウキウキした目は何んですか。
「別に。勉強は難しいとか、あのお菓子はおいしいとか、そんな感じ」
「恋の話しはしないの?」
「あぁ、そういえば…したことない」
「ふーん…」
未宇はつまらなそうに下を向いた。しかし、校門の外の道路に白い車を見付けると「あっ」と言って急に笑顔になった。
「迎えに来た!」
未宇は走りながら
「じゃーねぇー!!鋼吾君、彼女と別れたらすぐに教えてねぇー!!」
と言って、助手席に乗り込んだ。
そういえば、名屋君、彼女の話しないけど…順調なのかな。
未宇の彼氏の白い車を見送り、私は空を見た。
晴天。昨日の雨が嘘のようだ。昨日は歩いて帰ったけれど、今日は暁寿の後ろ。
ふと目線を落とすと、校門の前に立ち尽くす女の子を見つけた。どうやら誰かを待っているらしい。
…たまには、私も校門の前で待ってようかな。
短い階段を下り、校門に向かう。すると、その女の子の姿がはっきりしてきた。
セーラ服。肩までの少し茶色いストレートの髪。私より、背がかなり小さい。そして、手には淡いピンクの傘を持っている。
…私、たぶんこの子見たことある。
その子が振り向いた。
やっぱり。
目が合う。あっちは驚いたような顔をしたが、たぶん私も同じような顔をしていたに違いない。
この子、名屋君の彼女さんだ…。