悪い男-3
冬になった。
来週誕生日が来れば二十代は終わるが、風邪をこじらせて熱を出してしまい、会社を休んだ。夜鈴が来て色々面倒を見てくれた。鈴がコンビニで買ってきてくれた軽めの食事を済ませ、寝ていると、鈴が布団に入ってきた。寒くなっても丈の短いスカートを穿く鈴の太股を軽く撫でる。見つめ合う鈴の表情は変わらない。
「元気そうじゃん。心配して来て損した」
「これでも熱があってしんどいんだけど」
「冗談だよ。いつもの喬寿くんと違うから、分かるよ」
僕は鈴の脚を触っていた手を離して目の前に持っていき、人差し指を近づける。鈴の唇に指を押し付けると、間から舌が出てきて咥える。
「いっぱい付けてね」
鈴の唾液が指を濡らして輝かせ、それを自分の口の中に差し込む。鈴の甘い粘膜を指に蜂蜜を付けてしゃぶる子供みたいに舐めて味わうと、ゆっくりと股間の角度が上がっていく。
「今日はキス出来ないからね」
そう寂しそうに投げ掛けると、鈴は脚を絡ませて抱きついてくる。鈴の薄い腹に太くて固いものが当たる。
「こっちは元気なんだね」
鈴が勃起した僕の股間の先を指で撫でる。
「出す?」
「うん」
鈴は布団を剥いで僕のズボンを下着ごと押し下げる。軽く手で擦られただけで先から濁った汁が漏れ出て、その粘膜を使って性器全体に延ばして大きく上下させる。どんどん液体が溢れてきて、鈴の手を汚していく。鈴は手を動かしながら、反対の手でティッシュを何枚か抜いて、射精を待ち構える。
「いく…」
精液が飛び出すタイミングで、鈴がティッシュを被せて処理する。二人で同じものが落ち着くのを待つ。
「全部出た?」
「うん」
僕はティッシュで汚れた性器を拭ってからズボンを上げて布団を被った。鈴は台所で手を洗ってから、また布団に入って甘えるように抱きつく。
「もう帰らないと」
僕が鈴の髪を触りながら言うと、
「もう少しだけ」
鈴のこもった声が僕の胸に当たった。
体調が戻った月曜日の夜に鈴とキスをしていると、玄関のチャイムが鳴り、ドアを開けると有紗だった。
「誰、この子」
訝しげに鈴を見つめる有紗に、
「こんばんは」
と鈴は無邪気な笑顔を作って答える。
「隣の部屋の子で、お母さんが帰るまで一緒に待ってるんだ」
内心慌てながら、状況説明を淡々とする。
「そう。相変わらず、良い人ね」
「そうなんです。いつも安西さんにはお世話になってるんです」
初めて自分を名字で呼ぶ鈴に悪寒が走ったが、有紗は鈴の芝居に完全に騙されていた。チラッとこっちに視線を送る鈴の目は楽しんでいるようだった。
有紗が来て鈴は帰るかと思ったが、そうはならなかった。有紗が出て行こうとした鈴を呼び止めたのだ。これも鈴がコントロールして作り出した状況に思える。三人分のコーヒーを作る僕の向こうで仲良く話し込む二人に安堵したが、同時に鈴の普通の子を演じる変化っぷりに背筋が寒くなる気持ちにもなった。僕は鈴に触発されたのか、三つのコーヒーカップの内の一つにミルクを入れた。
「付き合ってどれくらいなんですか」
ミルクの入ったコーヒーカップを手に取った鈴が言う。因みに鈴は質問の答えを知っている。
「二年くらいかな」
「そうなんですか。どうやって知り合ったんですか」
「知人の紹介。ごめんね、面白くない出会い方で」
「結婚とか考えてるんですか」
有紗は黙って僕を見る。僕は固まって苦笑いする。
「どうなの、結婚考えてるの」
「そりゃまあ…」
「まあ、だって、こりゃ考えてないね」
有紗は鈴に微笑みながら言う。一口コーヒーで間を置いてからトイレに立つ。
「結婚考えてないでしょ」
鈴は悪戯っぽく笑って言う。
「そんなことないよ」
と弁解した瞬間、鈴が唇を奪いに来た。鈴は短い舌を懸命に伸ばしながら唾液の海を泳ぐ。股間を触られて一瞬腰を引きかけたが、負けじと僕も鈴のスカートの間に手を入れて下着の上から秘所を触る。
「このあと彼女さんとエッチするんだから、準備体操だね」
僕は興奮して、鈴を抱きしめて首や耳に吸い付いた。鈴の小さくて可愛いお尻を撫で回し、指を下着の間から入れる。
「やん…」
流石にやり過ぎたと、手を離して耳元で謝る。もう一度鈴の唇と一体になる。恋人が近くにいながらするキスはとても恐ろしくて、興奮した。鈴もこの悦びを覚えてしまったように、僕の唇をより激しく求めてきた。