疲れているんですね?-2
僕とは目を合わさないよう目を伏せて、洗う個所、つまり僕の喉元辺りに目を置いて、丹念に泡立てた垢すりで磨いてくれた。
喉、そして胸へと降りていくと、牧子の手がぴたりと止まる。牧子は勃起をまじまじと見ているんだろう、股間辺りに視線が熱く感じられた。彼女髪で隠されて、僕は自分のものが見えない。その隠された向こうで、僕の勃起はピクンピクンと物欲しげに揺れてしまう。
「疲れマラって言葉、知ってる?」
牧子が満面の笑顔で顔を上げた。彼女の唇は濡れていた。盛んに唇を舌で濡らしている。その唇、目と鼻の先にある。
「オトコの人は、疲れていると、ここが大きくなるそうよ?」
僕ににこやかに笑いかけながら、垢すりとは違った感触が、僕の勃起を掴んでいる。
「種の保存、なんですって。男性は疲れてくると、子孫を残したいという本能で、ここを大きくするんだわ・・・」
泡を僕の勃起にまぶし、ゆっくりと上下して洗い始める。いや、僕の張り詰めたペニスをさすり、射精を促している、と言った方が適切だろう・・・。
「元気ですね・・・。手の中でコリコリしてて・・・。若いんですね、やっぱり」
事務的なほどではないが、牧子は僕をしごき続ける。あえて言えばその仕草、イヤラシさを務めて隠しているように見えた。生理的なものだから、と言いたげに。
「はあっ・・・」
心地よさに思わず喘いだ僕を見上げ、微笑む牧子の瞳は潤み、淫に染まって見えた。興奮の極みの只中にいる僕は、牧子がその濡れた唇で含んでくれないものか?あるいは、芳恵であったらこのまま僕に跨り、互いに歓を尽くしていたろう。僕の脳裏で妄想が止め処なく溢れていく。
「もう少しですよね、きっと・・・。出してしまっていいんですよ。水着に掛かってしまってもいいんです。濡らしてしまったから、これはもう洗濯するので・・・」
幾分かトーンダウンした声で、牧子はそう呟くように言った。なんだか牧子も自制しているような声の調子に聞こえた。牧子の唇も、あるいは牧子の水着ボトムに未だ隠された秘密の箇所に包まれることも、夢の夢、遠のいていくような気がした・・・。
「あっ!」
牧子が驚いた声を上げ、ピクリと跳ねるように顔を上げる。僕はとうとう牧子の手の中で爆ぜた。白濁が筋になり、牧子の鼻のそばにまで飛び散っている。
牧子はそれを、何事もなかったように手で拭う。
「さ、きれいになりましたね?お湯を掛けますよ」
と、柔らかに言う。まるで、僕の興奮と、僕が感じた、牧子の中で煮詰まるような興奮も、なかったような雰囲気で。
射精した僕の陰茎を、再び泡を立てて洗い清めると、湯を、そこだけでなく、泡の付いた個所すべてに降り注ぎ、僕は確かにきれいになった。
だが僕は見ていた。牧子の鼻のそばに飛んだ僕の精子を手のひらで拭ったそのあと、牧子は確かに自分の口元にそれを持って行った。多分だが、彼女は僕の白濁を手から舐め取り、呑んでしまったのだろう・・・。