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【学園物 恋愛小説】

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想[6]-1

私は確実に名屋君にひかれてる…。だけど名屋君には彼女がいて、私には暁寿がいて…これを壊しちゃいけない。
もう、辞めよう。傘を返したら私と名屋君はただの同級生に戻る。ミーハーまがいなこともしない。名屋君に関わらない。…それでいいんだよね!名屋君に対するこの気持ちは…隠す。ずっと隠し通して、いつかは消す。
これでいい、これで誰も傷付かない、誰も…悲しんだりしない…。


週の初めの月曜日はとても快晴で、病み上がりの私にはとても気持ち良かった。雲一つ無い完璧な秋晴れ。私は、朝は歩いて登校しているので、周りの木々の変化にはよく気が付く。毎日通る銀杏の並木道は、先週よりも黄色く鮮やかに染まっていた。
深く深呼吸して私は空を見る。澄んだ水色。黄色と水色のコントラストがとても綺麗で、私はつい見入ってしまった。
「おはよう」
不意に後ろから低い声がした。
「名屋君…」
振り返らなくてもわかる、その低く甘い声。
「おはよ!あのね、はいコレ」
私は持ってきていた傘を名屋君に手渡した。
「ありがと、すっごく助かった!!」
名屋君は戻ってきた傘をまじまじと見つめ、私に視線を移し
「風邪引かなかったか」
と首を傾けた。
私は少し考えてから、うんと頷いた。
「そうか。良かった」
名屋君の顔が綻び、それを見て私の心臓はトクンと鳴った。初めて見た名屋君の笑顔が、私に向けられていたことがとても嬉しかった。本当に嬉しかった。
だけど…。
「本当にありがとう!それじゃあ、私先に行くね」
私は名屋君に背を向け走りだそうとするのを「主里」と言う声で遮られた。
「ん?」
私はまた名屋君を見る。
「学校まで…一緒に歩かねぇか?」
…名屋君、なんでそんなこと言うの。もう少しで「うん」て言っちゃうところだったじゃん…。
「ダメだよ。彼女さんに失礼だよ!」
「あ、俺…」
「バイバイッ!」
名屋君に手を振って私は走った。
バイバイ、名屋君。
忘れられる、大丈夫。もともとそんなに深く関わってた訳じゃない、でしょ?もう、二度と私にあの白い花は咲かないのだから。
…周りの黄色が滲んだのは、きっと気のせいだよね。


「おっはよーっ!!」
私は元気良く教室に入っていった。クラスメイトたちが「おはよう!」と返してくれる。
「おはよっ!!元気になったねぇ!風邪治った!?」
未宇がにこにこしながら駆け寄ってくる。
「うん!土日ずっと寝てたらバッチリ!!」
「良かったぁ〜っ」
未宇は私にガシッと抱き付いた。ちょっとオーバーだったけど、私の風邪が治ったことを喜んでくれたことが嬉しかったので、私は何も言わないことにした。
「心配掛けてごめんね、ありがとっ」
久しぶりに心から笑えた。本当にありがと、未宇。


3時間目は音楽、移動教室だ。
前から三人、男子が歩いてくる。
すぐに分かる、真ん中は名屋君だ。擦れ違う時、私はわざと未宇の方を向き、大声で笑った。姿が見えなくなった後も、私の胸はドキドキしている。
…なんで?
目が合っただけ、話し掛けられただけ、傘を貸してもらっただけ…ただそれだけじゃん。
馬鹿だな、私。よく考えたら、そんなの普通のことじゃん。そんなことに振り回されて、私だめだよね。私の一方的な想いで名屋君に迷惑掛けちゃいけない。
早く名屋君のこと考えないようにしなきゃ。早く…早く。
「…里?主里!聞いてるの?あたしの話!!」
「へ?あ、うん。聞いてるよ。雀が部屋で巣作りしてたんでしょ?」
「違ーう!馬鹿モン!!ツバメの巣食べてみたいよね、って言ったの。どうすりゃそこまで聞き違えるかなぁ」
「あ、ごめんね」
聞き違えた私も私だけど、元の会話もおかしいって…。
「主里、どうしたの。風邪引いたと思ったら急に元気になって、かと思ったらボーっとして…」
未宇は私を覗き込んだ。


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