由紀とのライン-1
由紀が退職をして、息子夫婦の待つ大大阪へ引っ越す1週間前、スーパーでの休憩時間に、同僚の山岡祥子に話しかけられた。
『更科さん、最近、急に若々しくなったって噂だよ。何かあったの?』
祥子が、そう話しかけてくる。
由紀と同年代の祥子は、51歳。
誰もが老いに悩む年齢である。
それが、同僚の由紀が急に若く見えてきた。
気にならない筈がない。
10歳も年下の男性と関係を持っている、なんて普通なら言える訳がない。
ただ、由紀は来週には、大阪へ引っ越してしまう。
そう思うと、なぜかそのまま正直に話す気になった。
『実は、10コ下の男性と、お付き合いしてるの。』
由紀は、そう言った。
『え〜!! どうやって知り合ったの?』
『その人、独身?』
『エッチもしてるの?』
と、祥子から矢継ぎ早に質問が飛んでくる。
スーパーの客だった人に声を掛けられたこと、1〜2週間に1度ぐらいのペースでデートをして、セックスもしてることを話した。
<羨ましい!!>
祥子は、心底、そう思った。
しかし、その1週間後、由紀はスーパーを辞めて、大阪へ引っ越してしまった。
祥子は、しばらくして、由紀にラインを送った。
『更科さん、お元気? 10コ下の彼氏とはどうなりましたか?』
しばらくして由紀から返信が来た。
『元気です。孫が可愛くて可愛くて! 彼とは、もう会えなくなってしまったので、それっきりです。』
しばらく考えて、祥子は、由紀に、
『もし更科さんさえ良ければ、その彼、紹介してもらえませんか?』
と、送った。
しばらくして、由紀は
『彼に聞いてみるから、ちょっと待っててね。』
と、返した。
そして、すぐに野田にラインを送った。
『野田さん、ご無沙汰してます。お元気ですか?』
『はい、今日は自宅で1人で寂しくお酒を飲んでいます(笑)』
『次の新しい女性は出来ましたか?』
と、由紀が聞く。
由紀が去った後、ちょっと大きな仕事が舞い込み、来週までは、多忙を極める。
再来週からは、ちょっと仕事に余裕ができて、楽になる。
そのことを、由紀に伝えた。
『実は、以前私が働いていたスーパーの同僚で、51歳の女性がいるんですけど、野田さんのことを紹介して欲しいと言われて、、、、』
『え?』
野田は、事情が飲み込めなかった。
『大阪に行く直前に、その同僚に野田さんと付き合っていると話したことがあって』
『あ〜、それで?』
『はい。野田さんさえ良ければ、という話になりますが。』
『構いませんよ、どうなるか分かりませんが、まずは会ってみないと。ちなみに、どんな感じの女性ですか?』
『外見は太ってはいなくて、ごくごく普通の女性です。たぶん40代半ばに見えると思います。』
『そうですか。会ってお茶やランチをするだけの関係が希望なのかな?』
『それは分からないですけど、たぶん、まだ女でいたいという思いは持っていると思います。』
『分かりました。まずは会ってみないと何も始まらないですよね。』
そう言って、野田は自分のラインのIDをその女性に伝えてくれるように頼んだ。
その日の夜、野田のスマホにラインが届いた。
『初めまして。更科由紀さんから紹介された山岡祥子と申します。突然のメッセージで失礼します。』
『はい、由紀から聞いてます。一度、お会いしてお茶でもしませんか?』
祥子は、野田が“由紀”と、呼び捨てにしていることに驚いた。
10歳も年下の男性に、呼び捨てにされ、そして抱かれていたのかと思うと、ちょっと興奮してしまう。
野田は、再来週の日曜日、祥子と会う約束をした。
祥子は、すぐに由紀にラインを送った。
『再来週の日曜日、野田さんに会うことになりました。』
『良かったわね。頑張ってね。』
『会うときに、何か気を付けることはないですか?』
『下着は、きちんとしたのを着けて行った方がいいかな。彼、女性の下着姿が好きだから。』
『きちんとした下着? え、初めて会うのに、いきなり?』
『オバサンが着るような大きな下着じゃなくて、若い子が普通に着けるブラジャーとパンティを着て行った方がいいと思うよ。』
『分かりました。初めて会って、いきなりそういう関係になるかな?』
『それは、祥子さん次第じゃない?(笑)』