④ホッククラブ-1
授業料が異様に高いが誰でも入学できる最低偏差値の大学がある。
当然学生は低レベルのぼんぼんが多い。
和歌山駅前の一等地に燦然と輝く白亜の校舎がその悪名高き浪漫大学だ。
そこの学生である本郷康太は日曜日にもかかわらず学校へ向かっていた。
学校前の喫茶店「浪漫飛行」が彼らの溜まり場だ。
駐車場には高級外車がずらりと並んでいる。
ホッククラブは現役大学生８人とOB２人で形成されている。
キャプテンはOBで小学校教師の正木さんなので集会は彼が休みの日曜になることが多い。
本郷康太は学校の授業には出ないがこの集会は欠かした事はない。
２５歳にもなっていまだ２回生なのはそのせいだ。
他のメンバーも似たようなもので学業は不振だが頭のいい連中が揃っている。
全員揃ったのを確認した後キャプテンの正木さんが話し始めた。
「俺、この春から１年生の担任になったんだが入学式に夫が来なかったママがこの５人だ。」
５人の人妻の写真をテーブルに並べた。顔写真と全身写真が１枚づつだ。
全員でにぎやかに女品評会の様相を呈している。
消去法で一人の人妻が残った。
「よし、次のターゲットは決まった。来週の集会までに彼女のスペックを調べておく。」
正木さんのデータ収集力は凄いんです。
子供やママやママ友との雑談から分析するそうだが時には彼女の３サイズや夫とのレス期間まではじき出すのだ。
でも大抵は夫婦の年齢、夫の職業、家族構成などまでだ。
ただ彼の成功見込みでAと判定された女性で落ちなかった女はいない。
みんなが一斉に「見込みは？」と聞く。
「勿論A評価だ。今回は康太にやらせる。Bフォーメンションだ。」
それは酔っ払い二人に絡まれている彼女を偶然通りかかった康太が助けるというものだ。
「詳しい打ち合わせは来週という事にして他にターゲットはいないか？」
一人のメンバーが手を上げた。
人妻ナンパのために料理教室に通っている勝という男だ。
全員のスマホに彼女の顔写真、全身写真が送られた。
全員がどよめくほどいい女だ。
勝は調子に乗って彼女の全裸写真までさらした。
正木さんが笑いながら「なんだ、勝が食った後じゃねーか。これじゃターゲットにならないよ。
俺たちは人妻（H)落し（O)研究会（K）すなわちHOK（ホック）クラブなんだからね。」
以前はレイプまがいの行動をとったりストーカーだったメンバーもいたが正木さんがすべて脱会させた。
だから今は女好きでイケメン、頭がよくて温厚なメンバーばかりだ。
日ごろの彼女の行動を把握するため一人のメンバーが彼女の自宅に張り付いた。
外出時の行動や夫の帰宅時間などがレポートされていく。
以前この時点で女の不倫を見つけて簡単に落としたこともあった。
日曜日。正木さんの説明が始まった。
「松本紗恵 ２９歳 結婚７年目 想像だが１６０ｃｍ弱、上から８０－６０－８５くらいかな。性格は素直で、女らしい優しさを持っている。さみしがり屋の一面も垣間見る事が出来るな。夫は大手商事会社の営業課長で、結構忙しいようだ。」
メンバーからの報告だ。
「この１週間、夜間の外出はない。子供が帰ってくる３時過ぎまでに買い物など済ませそれ以後はずっと子供と一緒です。身の堅い貞節な奥さんのようです。水曜日の午前中はエステサロンに行きました。調べてきました。週１回で４カ月の契約をしています。」
場所はここです。
テーブル上のパソコンに所在地を示した。
「夫が帰宅したのは週2日だけでした。きっと寂しい思いをしているんじゃないでしょうか。」
「うーん。夜間の外出がないのならBフォーメーションは無理だな。Cフォーメーションでいく。」
午前中から絡んでくる酔っ払いはいないからだ。
Cフォーメーションは酔っ払いがチンピラに変わるだけだ。