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透明な炎
【女性向け 官能小説】

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「おい?」

武藤が私を覗き込みながら声をかける。

「え?あ、なに?」
「平気か?予約取れたけど」

考え込んでいた自分の気持ちに決着がつかないまま
武藤の声で現実に引き戻されて

「あ、よやく?」
「安西が好きそうな店の予約が取れたって。
具合が悪いなら帰るか?今日ずっと人混みだったからな」

帰るか?と聞かれて
もう少しこの時間を一緒に居たい、と思ってしまった。

「へいき・・・」

無意識じゃなく、
ちゃんと意識して答えたその返事は
既婚者の武藤ともう少し一緒にいると言う事で、
朝から待ち合わせして、
ランチをして午後を過ごして夕飯も一緒に食べる。

会社だったらこれ以上長い時間隣に座って仕事をする事も珍しくないのに。

土曜日に時間を作って2人で会って・・・

それが時間の長さじゃない特別な事に思えるようで怖い。

既婚者なんだよ。

奥さんが待つその家に帰る男と
私は何を楽しもうとしているんだろう。

ザワザワするその気持ちにふたをするように

「どんなお店?」

無理をして明るく声を出した。



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