ストックホルム観光-1
翌朝、11時まで眠ってしまった。
やはり、長旅で疲れていたのだろう。
ホテルの朝食提供時間は、過ぎてしまっていた。
枕が変わると、なかなか寝付けない麻衣が、裕哉の腕枕で、ぐっすり眠ってしまった。
それだけ疲れていたのか、裕哉の腕の中の居心地が良いのか、それは分からない。
『おはよう。』
と言って、裕哉は麻衣のおでこにキスをする。
麻衣は、寝起きだけど、セックスをしたいと思った。
でも、そんなこと、言えない。
11時45分、ホテルをチェックアウトをして、王宮へ歩いて行く。
昨日は、日が暮れていたので分からなかったが、ストックホルムは、なかなか景色の綺麗な街である。
“水の都”と言われるストックホルム。
いくつもの運河が、この街に張り巡らされている。
王宮では、12時15分からの衛兵交代式を見物する。
この衛兵交代式は、観光客に人気のようで、大勢の人が、見物している。
麻衣は、興味津々で、衛兵を見ている。
衛兵交代を見たら、近くのカフェに入る。
朝食兼昼食を食べる。
食後、麻衣は自分の食べた分は、お金を払おうとする。
裕哉は、それを制して、
『せっかく、思い切ってヨーロッパに来たんだから、自分のための買い物に使いな。』
と言ってくれる。
それに、裕哉は、ほとんどクレジットカードで支払っているので、割り勘というのも、面倒なのだろう。
王宮から、市庁舎まで歩いて行く。
市庁舎は、ノーベル賞授賞式が行われるところである。
この市庁舎でも、カフェに入って、休憩をする。
『俺、ヨーロッパでは、こうやってカフェに入るのが好きなんだよね。』
と、裕哉が言う。
麻衣も、こうやってヨーロッパの景色を見ながら、オープンカフェでコーヒーを飲むということが、大好きになった。
午後3時になったので、ストックホルム中央駅に戻り、タクシーに乗り込む。
タクシーでバッタムン港へ向かう。
『Have you bought your tickets yet ? (チケットはもう持ってるの)』
と、運転手が聞いてくる。
『No, not yet. But why ? (いいえ、まだですけど、どうして?)』
どうも、チケット売り場と乗船ターミナルは、かなり距離が離れているようで、先に、チケット売り場へ寄ってくれる、と言う。
なかなか親切である。
麻衣をタクシーの中で待たせ、パスポートを預かり、フェリーのチケットを購入する。
そして、タクシーに戻り、乗船ターミナルに行く。
3時45分、フェリーのチェックインが始まる。
乗船券が、そのまま部屋のキーになるようで、それを持って、船内に入る。
ブリッジを歩いて、船内に入ると、高層ビルのようになっている。
『凄い、なんかショッピングモールみたい。』
と、麻衣が驚いている。
案内板を見て、エレベーターで11階に上がり、部屋に向かう。
麻衣は、客船が12階建てなのに、びっくりしている。
ちなみに、地下は3階まである。
部屋は、“コモドア”というデラックスルームである。
寝室と居間の2部屋に分かれていて、バルコニーもあって、なかなか豪華な部屋である。
裕哉の今回の旅行の、最大の目的は、このフェリーに乗ることだった。
一度、乗ってみたいな、とずっと思っていた。
1部屋で350ユーロという破格の料金だった。
この料金が安くなる時期を選んで、わざわざ北欧まで来たのである。
飛行機でフィンランドへ行き、ホテルに1泊することを考えたら、決して高くはない。
しかも、麻衣という可愛い女子大生と一緒である。
いつもの旅行以上に、ワクワクしてくる。
麻衣は、ずっとテンションが上がりっ放しである。
はしゃぐ麻衣を見て、可愛いな、と裕哉は思う。