H脅迫-1
日曜日朝から落ち着かなかった。
(行っちゃ駄目)詩織がそう自分に言い聞かせたのは何度目だろうか。
しかし心の奥底ではもう決めていた。
それが証拠に今あの日と同じ様にバスルームで長時間をかけ全身を磨いている。
そしていつもより入念に局部を洗い始め男に抱かれる為の入浴だと自覚しながらも
まだ盗撮はなかったかもと言う楽観論が頭をもたげる。
相手は朝までベッドを共にしたという嘘を真実にすると言っているのだ。
(行っちゃ駄目よ 。何をされるかわかっているでしょ。)
しかし夕方には完璧なメイクでドレスアップした詩織の姿がそこにあつた。
重い足取りで田代のテーブルについた。
「来てくれたんだ。嬉しいよ。ちょっと心配だったんだ。
だって貞節を絵にかいたような詩織先生にやりたいから来てくれって言ったんだからね。」
回りを気にしながら「もう声が大きいわよ。」
「僕は聞かれたっていいんだ。このいい女がこのあと僕の部屋に来るって大声で叫びたいくらいだよ。」
「そんなこと言うのなら私帰るわよ。」
「わかったわかった。でも今日は食べないんだね。」
「ええ、なんか食欲がないの。ワイン頼んでもいい?」
「僕もなんだ。性欲が強まると食欲が減退するんだ。詩織先生もそうなんだ。」
「馬鹿な事言ってないではっきりさせておきましょう。盗撮映像は持って来たわよね?」
「そんな事は部屋に入ってから話すよ。料理は残っているけど部屋で飲もう。」
立ち上がった。先日とは違うスィ―トルームに入った。
田代はソファーに腰かけたが詩織は入り口から離れなかった。
「ここではっきりさせて。盗撮録画は今手元にあるの?」
ポケットから取り出したSDカードをテーブルに置いた。
脱兎のごとく飛び付いたが男の手の方が一瞬早かった。
「やっぱり盗撮してたのね。酷い男だわ。」
「なんと言われてもいい。この録画がなければ先生にはもう会えなかったんだからね。」
「でも高校生のすることじゃないわ。」と言いながらその通りだと思った。
「何度も人妻には騙されたからね。昨日僕に跨がってヨガっていた女が急にもうおしまいにしましょって言い出すんだ。
美人ほどその傾向が強いね。そのための保険だよ。」
「それでその映像は消してくれるんでしょうね。ダビングなんてしていないわよね。」
「ウ〜ンどうしようかな。これはいつでも詩織先生を呼び出せる打出の小槌だからな。」
「私はそれを消して貰うためにここに来ました。貴方に抱かれる為に来たんじゃありません。もし消してくれないんだったら・・・」
「・・・だったらどうします?」
「だったら私困ります。お願い消してください。」
「そう最初からお願いするしか道はないんだよ。しかしこの録画すごい威力だな。あの美人女教師詩織先生が従順になってる。
勿体無くて消せないよ。そうだ僕の要望を10回叶えてくれたら消してもいいかな。」笑いながら詩織を見つめる。
「10回だなんて嫌よ。」
「それじゃ今日1回で10回分の快感をくれたら考えてやろう。俺はシャワーを浴びてくる。
その間にどうすれば俺が喜ぶかをよーく考えるんだ。」
詩織その間にベッドルームを隅から隅まで調べ尽くした。
あった。ベッド脇の植木の影にそいつはいた。ビデオカメラのSDカードを抜いて元の場所へ戻した。
徹底的に調べたがカメラは1台だけだった。