呼び出し-3
悠子は頷くとハッとして、
『どうして、知ってんの‼』
と大声を出す。櫻井は、
『静かにしろ!』
『声を落とせ!』
とたしなめる。悠子は怒りながら、
『それも山田君に聞いたのね!』
『機密事項なのに!』
と結構大きめの声で言う。櫻井は首を振り、
『山田は話しちゃいない!』
『山田が隣で小声で話してるから気になり、盗み聞きしただけだ。』
となだめる。悠子はまだ怒りながら、
『でも迂闊な行いだわ。』
『一般民間人が近くにいるのに。』
と言っている。櫻井は困った顔になるが顔を上げると、
『そう言うな。』
『盗聴器をいつ仕掛けるか悩んでるそうだな?』
『山田が誰かと話してた。』
『俺は、第三月曜日が良いと思う。』
『あのアジトの若い男は、その日少しコンビニに長居する。』
と言うと悠子はまた大声で、
『あの男、知ってるの⁉』
と言うと櫻井が顔をしかめ、
『声を落とせ!』
『知り合いってほどじゃ無い。』
『以前、アパートの入口でやつが物を落としたから教えてやっただけだ。』
『それ以来、会えば会釈する程度だ。』
と言う。悠子は櫻井の目を見て、
『第三月曜日で間違いないのね。』
『どれ位コンビニにいるの?』
と詰問する様に櫻井に聞く。櫻井はその圧力とさっきまでの悠子とのギャップに戸惑いながら、
『ああ、間違い無い。あいつは、コンビニの雑誌コーナーで立ち読みをする。』
『一緒に入った事は無いから正解な時間は分からん。だが最低でも20分は居る筈だ。』
『俺も夜勤の仕事が無い、毎週月曜日はコンビニに立ち読みに行くから、それであいつに気付いたんだ。』
『あいつに会うのは、昼前くらいだ。何かの雑誌の発売日だろう。』
と言うと悠子は、
【監視報告からコンビニに行く事は上がって来ていたけど、すぐに戻るとの事だった。長居するとは聞いていない。】
【確かめないと櫻井の言う第三月曜日だけでも。】
と考え込む。真剣な表情の悠子の様子に櫻井が声を掛けれ無いでいると、
『職場に戻るわ。』
『調べないと。』
と悠子が言い、着替え始める。まだ体がガクつくので櫻井も手を貸し着替えを手伝う。櫻井は、
『髪は乾かすか?』
と聞くと悠子は、
『大丈夫。早く戻りたいの。』
と言う。櫻井は、
『これを持って行け。』
『出来るだけ乾かすんだ。』
と新しいバスタオルを渡す。悠子は、
『ありがとう。』
と言い着替え終わり、パンプスを持って浴室のドアに向かう。櫻井が、
『忘れ物だ。』
と変装用カツラを袋に入れ渡す。悠子は、
『そうだった。』
と受け取り浴室を出る。櫻井は付いていき悠子が急いで玄関を出るとドアを閉め鍵を掛けた。