思いがけない出来事 1-1
美奈子は自分自身の変化に驚いていた。
小学校時代からのいじめが原因で自ら心を閉ざし、
自分だけの世界に閉じこもったことがあった。
その時の唯一の救いはオナニーだった。
自室に籠り、ひたすら股間を弄り続ける。
そんな毎日だった。
最初は机の角に股間を押し付けるだけだった行為が、
その言いようのない快感を得るため、恐る恐る指で直接擦るようになった。
ヌルヌルとした感触に気づいた時は、自分へ病気ではないかと心配になり、
悩んだ挙句、姉に相談しようと、
当時は同じ部屋で寝ていた紗理奈に声を掛けようとしたことがあった。
真冬だったのだろう。紗理奈は頭から布団をかぶり、寝たいた。
しかし、掛布団が小刻みに揺れているのに気づいた美奈子は、
姉が泣いているのだと思った。
普段泣き顔など見せない姉がどうしたのだろうと黙って見ていると、
布団の中から紗理奈の呻き声が聞こえた。
(具合でも悪いのでは……。)
美奈子は声もかけられず、じっと姉の寝る掛け布団を見ていた。
掛布団はさらに大きく揺れ始め、姉の呻き声も次第に大きくなってきた。
美奈子は思わず声をかけ、姉の掛布団をはいだのだ。
姉は全裸で、汗びっしょりで丸くなっていた。
(きっと、熱があるんだ。大変だ。お母さんを……。)
美奈子が大声を上げようとした時、姉が口を開いた。
「あ、美奈子。ごめん。起こしちゃったね。」
「お、お姉様。だ、大丈夫?具合が悪そうだったから……。」
「あ、ごめんごめん。大丈夫。つい、夢中になっちゃっただけだから。」
「夢中に?」
「あ、まだ美奈子には早かったかな。」
そう言って美奈子はけだるそうに起き上がると、大きく息をついた。
「ふ〜。ああ、汗びっしょり。シャワー、浴びてこよっと。」
そう言って紗理奈は立ち上がった。
見上げる美奈子の目の前に紗理奈の股間が見えた。
(濡れてる?)
不思議そうに見上げる美奈子に気づいた紗理奈が小さな声で言った。
「あ、お父様とお母様には内緒にしてね。黙って持ってきちゃったから。」
姉はそう言うとパジャマを羽織って部屋から出て行った。
姉の布団の上にはピンク色をした、3センチくらいの、
コードが付いた小さな物体が転がっていた。
(なんだろう。)
美奈子は恐る恐る手を出してみた。
その物体はヌルッとした、液体のようなものが付いていた。
(やだ。なんだ、これ……。)
コードの先にはリモコンのようなものがある。
美奈子はやはり恐る恐る手を伸ばし、それを手に取った。
ダイヤル式のボリュームのようなものが付いている。
美奈子はそっとそれに触れ、少しだけ動かしてみた。
カチッという小さな音と共に、ピンクの物体が小刻みに震え出した。
(やだ、動いた。どうしよう。)
その日を境に、美奈子は姉の夜中の行動が気になって眠れない日が続いた。
あれからも姉は時々布団をかぶって呻いている時があった。
しかしそれでも、美奈子はあの時の姉の呻き声、そしてけだるそうな表情、
何よりも姉が立ち上がった時に見た、濡れたような股間。
何かいけないものでも見てしまったような気持ちと恐怖感から、
あの時のことを姉に聞いてみることができずにいた。
そんなある日、美奈子は久々に自分の股間を弄っていた。
気のせいか、前よりも股間に一本筋の隙間が広がってきたような気がする。
指でそっと撫でているうちに、
その割れ目からあのヌルッとした液体が染み出してきた。
美奈子は恐る恐るその液体を指ですくい、匂いを嗅いでみた。
(酸っぱいような……。なんか、不思議な匂い……。)
指を割れ目に戻すと、その周りから何とも言えない感覚が広がってくる。
気が付くと、美奈子は人差し指を割れ目の間に当てて擦り始めていた。
擦れば擦るほど、ヌルヌルとした液体が滲み出てくる。
それをさらに指に絡ませ擦り続けているうちに、美奈子は頭がボーっとしてきた。
股間から腰のあたりがピクンピクンと動き、美奈子は驚いて指を外した。
(なんだったんだろう。今の……。)
美奈子は指を目の前に持ってきてよく見た。
指と指を擦り合わせ、ヌルヌルの感覚を確かめてみる。
(あれ?これって……。)
美奈子は自分の股間から染み出てくるヌルヌルと、
姉の布団の上にあったピンクの物体のヌルヌルが、
同じような感触であることに気づいたのだ。
(えっ?じゃあ、もしかして、お姉様のあれって……。)
数日後、姉の、例の呻き声が始まった。
美奈子は寝たふりをしながら聞き耳を立てた。
布団の中から聞こえる姉の呻き声。
(あ、ああ、い、いい。)(あ、気持ち、いい。)
微かにだが美奈子の耳にはそう聞こえた。
微かだがモーター音も聞こえる。
掛布団が大きく揺れ、やがて静かになった。
美奈子は姉に声を掛けたいのをじっと我慢し、寝たふりを続けた。
やがて姉が身体を起こし、美奈子の方を覗き込んだ。
美奈子は思わず緊張し、身体を固くして寝たふりを続けた。
「うふ。さてと、シャワーに行ってこよっかな。」
姉はこの前のようにパジャマを羽織って部屋を出て行った。
姉が部屋を出て、しばらくしてから美奈子は起き上がった。
掛布団を捲ったままの敷布団の真ん中に、あのピンクの物体が置いてある。
美奈子は恐る恐る手を伸ばし、
コードの部分を持ってリモコンと一緒に自分の手元へ持ってきた。
ピンクの部分はやはり濡れている。
美奈子は人差し指を出し、そのヌルヌルに触れた。
(やっぱり。同じだ。だとしたら……。)