艶之進、気張る肉刀-9
見届け人は俄然忙しくなり、絶頂回数を書き留める紙を取り落としそうになる。
「いくっ……いくっ…………いくーーーーーーー!!!!」
力蔵、奮闘し、蘭をまた歓喜の極みへと誘う。
「だめっ……だめっ…………いっくーーーーー!!!!」
艶之進・二倫坊も奮励し、凜をまた法悦の峰頂へと押し上げる。
いやはや、もう、激闘である。あけすけなヨガリ声の応酬に、老女の嵯峨野も、さすがに頬へ血をのぼらせている。その横で、綾乃は首を伸ばし、舌なめずりしそうな顔で観戦している。
甚だしい乱戦となり、いくつ逝ったか、きちんと把握しているのは見届け人くらいのものであったが、まだ、ら組が少し先行しているようだった。
試合終了の刻限が近づく。
ところがここで、り組が最後の力を振り絞った。
艶之進、力感溢れる腰の突き上げ。二倫坊、えげつないほどの腰の激振り。凜、息も絶え絶えに悶絶するも、かろうじて意識の糸を一本だけ握りしめ、尻だけは盛んにくねらせている。
艶之進は凜の紅潮した切ない顔を見て、急に愛しくなった。彼女をヨガらせているのは二人の男なのだが、艶之進の意識にはもう二倫坊の存在はなく、目の前の凜と二人きりで熱い交情を繰り広げている気分だった。彼女の半開きの紅唇がよだれで光っている。艶之進は片腕で凜を抱き寄せ、口づけをした。瞳を閉じて快感に浸っていた凜は薄く目を開け、接吻に応える。二人は熱烈な口吸いでさらに高揚しながら、苛烈なほどの交接になだれ込む。その動きを感知し、二倫坊も超速の腰振りをさらに格上げした。
艶之進、二倫坊、凜。この三者の動きが一体となり、はたから見れば得体の知れぬ熱を発しているようだった。その熱にうかされるように、凜の身体がビクンッ、ビクンっと跳ね、やがて止み、すぐにまた釣り上げられた若鮎のように躍る。それが何度も繰り返される。連続絶頂の渦へ投げ込まれたのであった。まさに箍(たが)が外れた状態だった。
見届け人の筆がせわしなく紙の上を走り、試合終了の太鼓がドンッと鳴った時には、紙には多くの「正」の字と、未完成の「正」の字が書かれてあった。
力蔵は蘭の身体から横に転がって大の字になり、汗まみれの裸体から湯気を上げていた。少し離れて小夜之丞がそっぽを向いて座っており、素知らぬ顔で煙管をくわえていた。
艶之進はまだひくついている凜を下から抱き留め、その背中を撫でてやっていた。肛門から一物を抜いた二倫坊は、うーんと背伸びをひとつしたが、ふと顔を強張らせ、その場にうずくまった。
「おい、相棒、大丈夫かい?」
艶之進が声をかけると、二倫坊は腰に手を当て、苦笑いした。
「いや、張り切りすぎて、腰をやっちまったようだ……」
「腰?」
その時、用人が高らかに声を発した。
「集計の確認が終わりもうした」
皆が押し黙り、聞き耳をたてた。