艶之進、奮う肉刀-10
小夜之丞はと左を見れば、彼は大女の肉布団に半ば埋もれるように乗り、腰をゆったりと上下させていた。口は左の乳首を吸いたて、右手は別の乳房を弄び、左手は女の股間に潜っている。どうやら指でおさねをいじっているらしい。口、手、魔羅、全てを駆使して女を攻めていた。
力蔵へと目を転じれば、やつは女を上に乗せ、下から怒濤の突き上げを繰り出していた。真珠入りの魔羅がズボズボと秘口を出入りし、女はひいひいと甲高い声を上げていた。
四十畳の座敷は四十組の男女の熱気で満ちてきた。女のよがり声があちこちで上がり、入り混じり、異様な音のうねりとなっていた。そんな中を、見届け人たちが歩き回り、冷静に「女の逝き具合」を検分していた。
艶之進は自分の魔羅の長さを主な武器としていた。美沙の子つぼ(子宮)を怒張で撞木のように撞くのである。これを痛がる女もいるが、さいわい、美沙は喜んでいた。おさねへの刺激で気をやる女は多いが、その逝き方は鋭いものの、じつは浅く、すぐに覚める。子つぼへの刺激は、女の高まりは緩やかだが、いったん感じ始めると、その悦びは深く、長い。
「んああああーーーーー」
現に美沙の喘ぎは粘りを帯びてきた。秘壺を行き来する魔羅の傘も大きく開いているので、女の興奮をより強く掘り起こす。そして、四半刻の半分(約15分)になろうかという頃、美沙は、
「あひっ!」
ひと声吠えて一度目の高みに登った。そばにいた見届け人がそれを目ざとく看取り、紙に「一」の字を書き付けた。
「んはーーー!」
右隣の腰元が二倫坊の攻めで極楽往生の声を振り絞り、少し遅れて小夜之丞の身体の下の大女が、
「んひーーー!」
身体に似合わぬ金切り声を立てて逝った。見届け人どもは書き付けに忙しくなり、そんな様を、脇息にもたれた綾乃が淫猥な笑みをたたえた瞳で舞台の上から見下ろしていた。
裏世界の親玉の力蔵はというと、下腹部に乗せた女を盛んに揺すり上げていたが、まだ腰元は逝くまでには至っていないようだった。強いばかりの攻めに女体が追いつけないでいるのだ。一物に埋め込んだ真珠を過信し、交接が単調になっているのだ。それでも、ようやく女陰が練れてくると、快味が勃然と生じ始めたらしく、力蔵の相方は一番遅れて絶頂を迎えた。
淫靡な試合も刻限まで半分を切り、艶之進は周りを見るのをやめ、美沙を続けて逝かせることに専念した。女の脚を閉じさせ、自分の両脚で相手の両腿を挟むようにして交合する。こうすると女陰が締まり、感じ方が強くなる。
「あんっ、あんっ、あんっ、あんっ」
美沙は激しく悶え、二度目の甘美な登頂。
「よーし。今度はこうだ」
大きく脚を広げさせ、秘壺に思い切り怒張を押し込む。鋭く突くというよりは重く押す。それを延々繰り返す。女は腰をひくつかせ、淫らな蓬莱登山の八合目。艶之進は「六根清浄」とは唱えないまでも、荒い鼻息を吹きかけ、美沙の登頂を促す。そして、
「くっああああああーーーーーー!」
相方は怪鳥の叫びを発して三度目の頂を極め、そのまま軽く意識を飛ばした。同じような淫靡な雄叫びがあちらこちらで上がり、魔羅くらべの初戦は終わりに近づいた。
そして、ドドンッと太鼓が打ち鳴らされ、
「交わりかた、やめいっ!」
用人が声を張り上げた。
「ふうううーーーー」
おおかたの男が女体の上にくずおれた。
結局、艶之進は半刻の間に美沙を三度、絶頂に導いたわけだが、三回というのはどうなのだろう。他の出場者はどうだったのだろう? 彼は辺りを見回したが、ふと、自分が精液を放ってはいないことに気づいた。妙な緊張が魔羅の感度を鈍らせたものか……。ともあれ、初戦を終えた艶之進は美沙から離れ、見届け人が配り始めた枕紙を受け取ると、相方の腰元の濡れた陰部を拭ってやり、もう一枚で己の半立ちの男根の湿りを処理した。
「ただいま、筆録を集め、まとめておりまするー」若侍が声を張り上げた。「結果が出るまで、暫時休憩をお取りくだされー」
四十名の男どもは乱れた布団に腰を下ろし、身繕いを始めた腰元たちに声を掛けたり尻を撫でてやったりしていた。
「おう、あで之進さんよ。首尾はどうだった? おりゃあ、四度(よたび)、女を極楽往生させてやったぜ」
二倫坊が語りかけてきた。
「四度とは大したものだな。拙者は三度であった」
艶之進の返答には忸怩たるものが少し含まれていた。そこへ、小夜之丞が汗を手拭いで抑えながら近づいてきた。二倫坊が問う。
「やさ男、おめえは何度、大女を逝かせた?」
「あたしは五回で刻限となってしまいました」
「五回!?」
艶之進と二倫坊が同時に言って顔を見合わせた。
「人は見かけによらぬもの」「上には上がある」
違うことを言いながら二人は小夜之丞をまじまじと見つめた。
「そういえば……」艶之進は力蔵の姿を捜した。「あの、いけ好かない野郎はどこへ行った?」
「さっき、座敷から出ていったようだが……」二倫坊が廊下のほうへ目をやった。「もしかしたら奴さん、威勢のいいのは言葉だけだったかあ? 真珠入りの一物はこけおどしだったかあ?」
すると、言われた本人が戻ってきた。下腹部に手拭いを当てただけの裸だった。いや、もっと詳しく言えば、立ちを保った魔羅に手拭いを引っかけた姿だった。
「いやあー、ちょいと外の風に当たってきたが、一度おっ立ったものは、おいそれと萎(しぼ)まねえもんだ。やっぱり、氷でも当てねえことには……」
力蔵が絶倫を吹聴しかけた時、用人が初戦の結果発表に入った。
「これから名を呼ばれた者、次の間へ移られよ。呼ばれなかった者は、残念ながら落伍者じゃ……」