ニワトリ-5
畑に着くと
みんながニワトリのケージを
作っていた
ケージの中には産卵用の巣箱も
出来ていた
巣箱の中には草が敷かれていて
水飲み場まで
竹筒を割って作られている
「みんな……すごいじゃないか!?
俺が作ろうとしていた物が
全部出来ている!」
クロエが嬉しそうにエイジを見て
他の彼女たちは
クロエに微笑みかけている
「クロエがしてくれたんだね?
ニワトリを飼っていたのかな?」
もうお昼を過ぎていたので
皆で小屋で焼いてきた魚を食べる
彼女たちは
ワンピース姿のソフィーを見て
微笑んでいる
微笑むと言うかニヤニヤしている
特にジゼルがソフィーに
笑顔をぶつけている
(あなた、エイジとしたわね?
次は私だと思ってたのに…)
ソフィーは
恥ずかしそうにしている
食べ終わると
エイジは最後の作業を始める
ケージの中に倒木を10本ほど
積み重ね
ケージの入り口を二重扉にした
15坪ほどの
ニワトリ用のケージが完成する
しかし、エイジはニワトリを
捕りに行こうとしない
皆は、早く捕りに行こうよ!
と言う顔をするが
エイジは畑仕事を始める
夕暮れになると
エイジは皆を連れて小屋に帰り
食事の準備をする
彼女たちは少しイライラしている
いつ捕りに行くのか?
早く食べたい!と
エイジを見るが
エイジは笑って返す
何か考えがあるのだろうと
大人しく
料理が出来るのを待っている
しかし、焼き魚を作っただけ
皆の期待は裏切られ
魚にかぶりつく
小屋の周辺が真っ暗になり
月の光りだけになると
エイジが行動を起こす
松明を三本作って籠を持たせる
「さぁ!
ニワトリを捕まえに行くよ!」
全員でニワトリのいた所に
静かに歩を進める
ジャングルの中でニワトリは
眠っているようだ
松明の光で数羽の雄が反応する
「雄の君たちは後でね………」
小声で言うと
巣の中でじっとしている雌を
後ろから
そっと両手で包み込むように
捕まえる
ニワトリは大人しい
持ち上げたニワトリの下には
卵があった
卵は籠に入れる
雌鶏を静かにケージまで運び
クロエたちが作った巣箱に入れる
その様子を見た彼女たちは
やっと理解する
鳥は夜になると目が見えないので
楽に捕まえられると
次々と雌鶏だけを捕まえ
ケージに運ぶ
雄だけは無視して
雌とヒナをケージに全て運ぶと
卵だけ小屋に持ち帰った
小屋に帰ると卵を茹でる
全部で20個ほどあった
茹で卵が出来ると
塩を振って皆で食べる
懐かしい!
おそらく皆が思った事だろう
翌朝、皆でニワトリのケージに
行ってみる
ケージの中では
雌鶏とヒナが歩いている
人の気配を感じた鶏たちは
警戒の鳴き声を発する
エイジは一旦ケージを離れ
滝まで戻り
白い小さな花が咲いている
草をむしり
クロエとソフィーに見せる
「この草を集めてくれる?」
二人は不思議な顔も見せず
草を集め始める
残りの三人を連れて海岸まで戻る
トリーとジゼルに
ヤシの実の殻を集めるように言う
エイジとケイティは
海に入り
海藻を集め真水で洗う
それぞれ集めた物を持ち寄り
ケージに戻ると
雌鶏が騒ぎだす
「もう少し待ってね」
鶏に話しかけると
小さな花のついた草をケージに入れ
ヤシの実の殻の内側を
削りだす
皆も真似て手伝ってくれた
削ったココナッツの実も
ケージの中に入れてやる
海藻は天日に干す
再び海岸に戻り
海砂を籠に入れて運ぶ
砂は重たい
彼女たちには無理をさせず
持てる量を持たせ
滝の水で洗う
水を含んだ砂は更に重たくなるが
ケージまで何度も往復して運ぶ
作業が終わる頃には
お昼になっていた
全員で小屋に戻る
魚を焼いて食べるが
今日の作業に不満を持っている者は
いなかった
それどころか笑顔が見える
夕方になる前に
ケージに行ってみる
するとケージの周りには
雄鶏が集まってきていた
「やった!思った通りだ!」
雌鶏を捕まえていたら
雄が探しに来るだろうと
予測していたのだ
彼女たちは驚いて
エイジのする事に
感心するのであった
鶏は警戒して鳴くが
ケージの二重扉に誘導する
外側の扉を閉めて
内側の扉を開けると
雄鶏たちは雌鶏の元へと
入っていく
これで鶏の捕獲は完了する
鶏たちは既に草やヤシの実を
啄んでいる
「良かった……
自信なかったんだよな」
小さな花の草は
ナデシコ科の植物だった
日本ではハコベと言う名で
食べることが出来る植物だが
ひよこ草と言う別名で
鳥のエサにもなる
最後に干した海藻も
入れてやると
鶏たちはそれも啄む
六人はしばらく
鶏の様子に
見とれてしまうのであった