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【学園物 恋愛小説】

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想[4]-2

私たちは二人ともチョコパフェを頼み、その味に満足していた。それにお値段も…最高に可愛い。
この駅前付近には高校や中学校がたくさんあるので、貧乏学生のためだろうか。お会計は五百円でお釣りが貰えた。本当に素敵!お洒落でおいしくて安くて…!!今度はランチタイムに来ようね、なんて話しながら店のドアを開けた。後ろから「ありがとうございました」と声がした。ぺこりとお辞儀をして私は外に出た。が、またすぐに引っ込んだ。
「ちょ…早く行ってよ」
背中を未宇はぐいぐい押したが私は一歩も動かず、代わりに「雨降ってる」と呟いた。
「まじですか…」
「はい、まじです」
「ウッソだぁ〜!」
あんたに嘘付いてどうすんの。
未宇はドアを手前に引き顔だけ出すと、すぐにパタンと閉めてしまった。
「あらホント」
「おわかりかしら?」
「傘お持ちですの?」
「いいえ、あなた様は?」
「持っておりません…」
未宇は急に不機嫌そうな顔になり、文句を垂れたので、私はそれに対しうんうんと適当に相槌を打った。未宇はおもむろにケータイを取り出すと、かちかちボタンを動かして誰かに電話を掛ける。そして、ケータイをぱくんと閉じ「行こう?」と言って私の腕を掴み土砂降りの中へ飛び込んでいった。
「ぬっ、濡れるっ!」
「あそこまでだから我慢してっ!」
そう言って小さな公園の真ん中にある広葉樹を指差した。
「何で!?店の中でいいじゃん!!」
「ダメだよ!だって…」
広葉樹の下に着いた。なるほど葉が重なり合っていて雨があまり落ちてこない。だけど…木下で雨宿りって…いつの時代だよ。
その時、公園の脇に白い車が停まった。
「だって、ここの方が近かったんだもん!」
未宇はそう言って一目散に駆け出した。目当てはもちろん車の助手席。その速さといったら!!開いた口が塞がらない。
未宇は助手席の窓を開けると私に向かって叫んだ。
「主里ぃ!それじゃあ、あたし先帰るからぁ!!気を付けてねぇ、風邪引かないでねぇ、明日学校でねぇ!」
「は?やっ…ちょっと待って…」
車がゆっくり動きだす。
「未ぃぃ宇ぅぅ!」
私も乗せて…。なんていう祈りは、もう見えなくなった車に届くはずもない。
これが…未宇の最大の欠点。もう少し友達のことも考えなさい。ファミレスのおしぼりも、二人三脚で怪我した時の絆創膏も、他にも色々…頼むから先に動いたなら私の分も…持ってきてほしい。かなり二度手間。だけど、本人は全く悪気があるわけじゃないので何も言えない私。
雨が止むまで待っていよう…。
私は大きな広葉樹に寄り掛かって、空を見上げた。
灰色…暗い…槍のように降り注ぐ大粒の雨。

何かやだなぁ…。

そう思ったのは天気のせいばかりじゃない。あのカラフルな巨大フラワーたち。一本の傘の中に、二人でくっついて入っちゃったりして?私の目の前何組のバカップルが通り過ぎたことか…。何かさ、傘なくて木の下で雨宿りしてるのが馬鹿みたいじゃん。お父もお母も仕事だし、暁寿の家はここから遠いし…。
…こっち見て笑うなっ!
…はぁ、濡れて帰ろうかな。


私が雨の中に足を踏み込んで、まだ数分しか経っていないのに、すでに骨の髄までビッショビショ。家までまだ20分ぐらいかかるのに…。
大通りで信号待ちをしていると、通り過ぎる人たちが私をじろじろ見ていく。赤になったばかりの信号機を睨み付け、私はそのまま空を見上げた。どうやら、癖になっているらしい。今日、何度そうしたことか。
視界には灰色のキャンパス、細い糸。強い雨の匂いがして、ビショビショの私はこの空と雨と一体になっているようだった。
灰色、雨、そして私。
ここには、もうそれらしかないように思えた。


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