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インモラル・セラピー
【その他 官能小説】

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インモラル・セラピー-2

「次は太腿と腰の施術に移ります。布を外しても構いませんか?」
「えっ……!? は、はい」
 それではお尻が丸見えになってしまうが、やめてくださいとも言いづらい。榊は仕事で見慣れているに違いないのだから、変に意識しすぎて気まずい雰囲気になるのは避けたかった。
「失礼します」
 衣擦れの音とともに外気が肌を撫で、下半身を覆っていたクロスが取り払われたのが分かった。
 なるべく平静を装ってはいるが、初対面の男性にお尻を見られる恥ずかしさにアイリは耳まで赤くなる。どうか榊が気づきませんようにと祈るばかりだ。
「太腿をほぐしていきます。むくみが解消されますよ」
 榊の両手がアイリの膝の裏から太腿の付け根までを何度も上下し、オイルを塗り込みながらゆっくりと揉みほぐした。
「いかがですか?」
「は、はい、気持ちいい、です」
「そうですか。でしたら念入りにケアしましょう。少しツボを刺激しますね」
 榊の親指が太腿の内側に滑り込み、脚の付け根あたりにグッと押し込まれた。
「んぁっ……!」
 その刺激にアイリの口からは思わず声が漏れてしまう。それはどう表現すればいいのか分からない奇妙な感覚だ。くすぐったいようで気持ちいいようで、性的な快感にどこか似ているとも言える。
「どうしました?」
「い、いえ……なんでもありません」
 妙な声を出してしまったことが気恥ずかしく、心臓が早鐘を打つ。榊に聞こえてしまうのではないかと心配になるほどに。
 榊の指は繰り返しそこを刺激し続けた。そのわずか数センチ先にはアイリのデリケートな部分が隠れている。そんなギリギリの場所を念入りすぎるほどに触られ続けているうちに、アイリの下腹部にはムズムズと蠢くような感覚が生まれる。
「んっ……」
 鼻の奥から勝手に息が漏れた。
「すみません、痛かったですか?」
「だ、大丈夫です、痛くないです」
 指先が今にも割れ目に届きそうな気がして、アイリはぎゅっと目を閉じる。
(もうやめて……これ以上そこはだめ……)

 そんな気持ちを知ってか知らずか榊の手が止まり、アイリは心の中でホッと胸をなでおろした。施術に熱が入りうっかり恥部に触れてしまうアクシデントが起きそうで、気が気ではなかったからだ。いつの間にやらアイリの全身にはじわりと汗が浮かんでいる。
「だいぶ温まりましたね。汗と一緒に体内の老廃物もしっかり出しましょう。仰向けになってください」
 簡素な下着がずれてしまわないよう注意深く仰向けになると、見下ろす榊とアイリの視線がぶつかった。さっきまでお尻を見られきわどいところを触られていたことを思うと恥ずかしく、アイリは咄嗟に目を閉じる。とてもじゃないが榊の顔を見ていられない。
「目元に蒸しタオルを乗せますね」
 閉じた瞼にしっとりと温かな重みを感じ、アイリは安堵した。蒸しタオルはもちろん心地いいが、何より榊の顔を見ずに済むのがありがたい。
「蒸しタオルを乗せると眠ってしまう方も多いんですよ」
「あ、わかります。すごく気持ちいいです……」
「アイリさんも眠ってしまっても構いませんので。次は耳元から首回りのマッサージです」
 こめかみに指が押し当てられる。そのままゆっくりと耳の前を下り、首筋を通り、鎖骨へ向かう。そしてまたこめかみ、耳、首筋、鎖骨……。
 静かな室内に、時間はゆったりと流れている。施術を行う榊のわずかな息遣いや衣擦れの音、時折オイルを足す水音をじっと聴いていると本当にそのまま眠ってしまいそうだ――。

「次は足のマッサージです」
 足を包むように両手が添えられ、土踏まずに指がグッと押し当てられる。凝り固まった疲れが強めの指圧で少しずつ昇華されていく。
「すごく気持ちいいです……」
「疲れてるんですね。女性はヒールを履くから特に疲れやすいですよね」
 指の間に榊の指先がぬるりと滑り込んで、くすぐったさにアイリは声を漏らした。
「……んっ……ふぁっ……」
「すみません、くすぐったかったですか?」
「はい、少し……。私くすぐったいのに弱くて」
「でしたら足の裏はこの辺にして、太腿から鼠径部に移りましょう」
「はい」
 返事をしてはみたものの、アイリは鼠径部がどこを指す言葉なのか知らない。日常生活でそんな言葉を使うことも聞くこともなかった。だから、なんとなく脚のどこかなのだろうと想像するだけだ。
 榊の手のひらが膝上から太腿を滑る。付け根に到達したところで、ビキニラインに親指がグッと押し込まれた。
「あぁっ……!」
 腿の内側をマッサージされた時と同様の形容しがたい感覚が生まれ、アイリは反射的に声を上げてしまった。
「鼠径部にもリンパ節があります。しっかりほぐしていきましょう」
「ふぅ……んっ……」
 また声が出てしまわないように、アイリは唇を噛んだ。だが、榊は何度も指圧を繰り返した。
「くすぐったいかもしれませんが、少し我慢してくださいね」
「はい……っ」
 アイリは今や返事をするのもやっとの状態だ。鼠径部へのマッサージはくすぐったいの一言では片付けられない。それは確実に性感を呼び覚まさせようとしてくるのだ。アイリの体はすっかり熱を帯び、身体中に玉の汗が浮かんでいる。
(くすぐったい? 気持ちいい? よくわからない……)


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