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インモラル・セラピー
【その他 官能小説】

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インモラル・セラピー-3

「少し股関節のストレッチをしましょうか。片脚ずつ曲げ伸ばししていきます」
「えっ……?」
 腿を上げたら恥ずかしいところが榊に見えてしまうかもしれない。小さな紙ショーツで隠しきれるのだろうか。
(どうしよう……どうか見えませんように……!)
「力を抜いてください」
 榊はまったく落ち着いた声色で、アイリの太腿をそっと抱え上げた。衣擦れの音がして、横たわるアイリのすぐ近くに気配が移動したのが分かる。アイリの右脚は持ち上げられ、伸ばしたままの左脚に榊が跨っている形だ。
 傍から見ればいわゆる松葉崩しのような状態だが、タオルで目元を覆われているせいで、アイリは今どうなっているのかがいまいちピンとこない。ただなんとなく、恥ずかしい格好になっているだろうことだけは感じていた。
「では、まずは膝の裏側を伸ばしましょう」
 アイリの右脚が榊の両腕で抱きかかえられ、天井に向かって膝をまっすぐ伸ばされる。
「いいですよ、このまま十秒キープしましょう。一……二……三……」
 榊のカウントはなぜかずいぶんとスローペースに感じる。それに、二人の距離がひどく近いことも気になった。
「はい、次は膝を曲げてください。胸に引き寄せるつもりで。限界まで近づいたら元に戻す。これを何度か繰り返しましょう」
 右脚が榊の腕から解放されると、アイリは言われたとおりに膝を曲げ懸命に引き寄せた。
「もっとぐっと引き寄せて」
「こう……ですか?」
「うーん、少し硬いようですね。では、こちらから手で押していきます。辛かったら言ってください。ゆっくり行きますよ」
 曲げた膝を榊の手が覆い、やんわりと力が込められる。
「はい、もっと奥まで……いいですよ。はい、戻す……そうです。もう一度」

 榊の言う通りにストレッチを繰り返しているうちに、アイリは不意にある異変を感じ取った。何か異物感のようなものを。
(なんだろう……今の)
「少し強めに行きますよ。はい、奥まで……ぐーっと」
 アイリの下腹部を柔らかく擦る布の感触、その奥にある確かな硬さ――。
(気のせいじゃない、何か……)
「はい、戻す……柔らかくなってきましたね。もう少しスピードを上げましょう。奥までぐっと引き寄せたら戻す。繰り返しますよ」
 膝を押し込まれる動きと呼応して、アイリの下腹部を下から上へと硬さが走る。そしてそれは膝を戻すと同時に上から下へ戻っていく。その正体が何なのか、それは二人が今どんな体勢をしているのかを思えば想像に難くない。
(うそ……当たっちゃってる……! それに、硬くなってる、みたい……)
「続けますよ。引いて、戻して、引いて、戻して」
 硬いものが何度も行ったり来たりを繰り返す。これではまるで疑似セックスだ。だが、榊の声からは気にする様子は感じられない。熱心になるあまり気付いていないのだろうか。
「あ、あのっ……! 榊さん……!」
「はい、どうされました?」
 アイリの呼びかけにも、榊は動きを止める気はないようだった。行ったり来たり、行ったり来たり……。
 思わず呼びかけたものの、アイリも何と言えばいいのか分からない。まさか、あなたのアレが当たっていますなどとは恥ずかしくて言えるはずもない。
「な……んでもない、です……」
「大丈夫ですか?」
「はい……」
 このまま気づかないフリをして終わりを待つ以外にいい方法は思いつかなかった。
「では、次は左脚にいきましょう」
 されるがままに脚を入れ替えると、伸ばした左脚を榊の両腕がしっかりと抱える。先ほどよりも下半身が密着した状態で、榊はまた一から手順を追った。
「……七……八……九……十。では膝を曲げて。引いて、戻して、引いて、戻して……」
(だめ……早く終わって……!)
 アイリは繰り返される疑似セックスが一刻も早く終わることを願った。股間を押し当てられ何度も擦られて、淫らな気持ちが芽生えようとしているのだ。その証拠に、アイリの恥ずかしいところがぬめりを帯びはじめているのを、アイリ自身気付いていた。

「――脚はここまでにしておきましょう。次はお腹からウエスト、脇のケアです」
「は、はい……」
 ようやく解放された安堵感からアイリは大きく息をついた。
 榊はアイリの両腿に跨り、おへその周辺あたりからオイルを塗り始める。手のひらで円を描きながら徐々に腰骨の方へと移動し、ウエストまでを揉み上げる。そこから胃のあたりを通り胸の下まで、そして脇腹をゆっくりと下っていく動作を何度か繰り返した。
「胸の近くのリンパ節と大胸筋のマッサージはバストアップ効果があります」
 そう言うと、榊の指先がらせんを描きながらデコルテを撫でた。それから胸の外側を手で支えるようにして、中央に向かってぐっと寄せ上げられる。
(胸にも触るの? 嘘でしょ……?)
 紙ブラ越しにだがしっかりと胸に触れられて、アイリは思わず身を硬くする。


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