放たれた欲望の果てに-1
麗子は雅和に抱き付いただけではなく、
すぐに雅和の唇をこじ開け、舌を入れてきた。
下半身を雅和の下半身に密着させ、太腿の間に雅和のペニスを挟むや否や、
そのまま絶妙な角度と深さで太腿を使って雅和のペニスを愛撫し始めた。
「麗子さん。これって……。」
「どう?なかなかないでしょ?この感覚。ほら、こうすればもっと……。」
麗子の太腿の筋肉を緊張させながら小刻みに振動させる独特の動きは、
雅和には初めての動きだった。
(いわゆる素股と呼ばれるテクニックか。
しかし、立って抱き合ったままで、
いつの間にかペニスを股の間に挟まれていた感じだ。
しかも、ただ挟まれているなんて言う感覚じゃない。
太ももと股間、もしかしたらオマ〇コの襞襞さえも、
ペニスに絡みついているんじゃないだろうか。)
しかも、上半身は胸のふくらみを雅和の胸に押し付けながら微妙に左右にゆすり、
首に巻かれた腕は背中から腰、腰から尻へと動き回り、
唇は雅和の唇から首筋、そしてわきから胸へと這いまわった。
「あ、ああ、す、凄い。抱き付いただけで、こんな刺激もできるのか。」
雅和は思わず、思ったことをそのまま口にしていた。
もちろんそれは、香澄に聞かせるためであり、
子どもたちに聞かせるためでもあったが、
本当を言えば、雅和が思わず感じたままを口にしてしまっただけのことだった。
それほどに麗子の愛撫は、新鮮であり、また強烈でもあった。
「ああ、麗子さん。こんなのは初めてだ。
あなたの太腿はまるで唇のようでもあり、オマ〇コそのもののようだ。
身体全体でボクの身体を愛撫してくる。
ああ、だめだ、い、いい。いきそうだ。」
「わかった?わたくし、全身が性器なんのよ。
雅和さんのご希望の場所で絶頂まで導いてあげる。」
世間体、羞恥心、道徳、遠慮、見栄、自尊心。
そうしたものをすべて捨てたところに性の境地は存在していた。
香澄も、麗子も。
そして征爾も雅和も、
全てのわだかまりは拘り、そして世間体や羞恥心、
幼いころから植え付けられてきた道徳心。
そして集団生活の中で覚えて着歌遠慮や見栄、
そして、何よりも自分は価値ある存在なのだと思い込む自尊心。
そうしたものをすべて捨て去り、本当のままに、
そう、野生に返って欲望のままに、
相手の身体を貪り、自分の身体を曝け出し、
何の遠慮も労りもなく、
香澄は、麗子は、そして雅和は、征爾は、自分の欲求のままに時間を過ごした。
なんの躊躇いもない、なんの後ろめたさもない、
充実しきった満足感が、そこにはあった。
四人は、常識と言う名の障壁をすべて取り去り、本能のままに動いた。
その結果、香澄も、麗子も、そして雅和も征爾も、
未だかつて味わったことのないほどの快感と満足感、達成感を得て、
いま、微睡んでいる。
「麗子。雅和さんの全てを、味わうことはできたのか?」
「ええ。あなた。雅和さんは、わたしに、
今まで味わった快感を、遥かに超える素晴らしい瞬間を与えてくれたわ。」
「麗子さん。そう言ってもらえて、正直、ホッとしています。」
「ねえ、征爾、さん。これからも、雅和さんと……。」
「ああ、もちろんだよ、麗子。
君と雅和さんは、セックスにおいてはベストパートナーかもしれない。
そんな相手に巡り合えたとしたなら、それは、最高の出来事だ。」
「ねえ、征爾さん。そう言うあなたも、
もしかして、最高のパートナーに出会ったんじゃないの?」
「麗子。。。。」
「いいのよ、なんの遠慮もいらないわ。ねえ、ちゃんと言って。
それが香澄さんのためでもあるわ。
あなたのベストパートナーは、香澄さんなんでしょ?」
「麗子。ボクは今までずっと、君に対して虚勢を張っていた。」
「どうしたの?急に。」
「いや、この際、本当のことを君に告げておきたくなってね。」
「……。」
「夫婦というパートナーがある。そして普通はその相手がセックスのパートナーだ。
でも、結婚生活を維持していくことと、性的な欲求を満たしていくことは、
全く別の次元のことなんだ。
世間では、それを共通の、一つの要素でくくろうとする、
それが間違いなんだ。
結婚生活を維持していくことと、セックスは、全く別のものなんだ。」
征爾の言葉に麗子は心の底から頷いた。
「あなた。あなたも、そう感じたのね。」
「ああ。そもそも、生きるということ、生きていくということと、
よりよく生きるということは、全く違う次元の上に存在する。
そのためのパートナーが違うことは、むしろ当然のことだとも言える。
そもそも、人生を生きていくこととセックスでは、
目的が全く違うことに人々は気づいているのだろうか。」
「それほどに違いがあると……。」
「ああ。人間関係を作っていくために一番必要なのは、相手に合せる寛容。
そして思いやりや洞察力。
でも、セックスにおける最終的に必要な要素は、結局は満足感。絶頂感。
それでしかないんだ。
それを確実に与えてくれる相手が、セックスにおけるベルトパートナーだ。
極論で言えば、優しくなくても、寛容でなくても構わない。
思いやりがあろうとなかろうと、全く関係ない。
最大級の、最上級の、快感を与えてくれるかどうかということの一点のみだ。」
「快楽に対する、あくまでも貪欲な、欲求、と言うこと、ですか?」
「ああ。男も、女も、最終的には、最大級の絶頂感が得られればそれでいいのだ。
この世の中で最大級の絶頂を与えてくれる男こそが、
香澄にとっても、麗子にとっても、最高の男なんだよ。」