奪還-11
下田らは舎弟を連れ事務所の玄関を出る。渡嘉敷の背後にいきり立つ集結した組員らが罵声を浴びせる。
「帝東さんよー、清水と沼田を匿ってるそうじゃないか!差し出して貰おうか!!」
「あのマッポ達か?何の事だか知らねーなー?」
薄ら笑いを浮かべながら組員連合を見渡す。
「見えすいた嘘をつきやがって!じゃあよー、貴様らと清水らはグルって事でいんーんだな?」
「はっ?何の事だ?グルとか。意味分かんねーし。」
「しらばっくれるな!麻薬取引した金が強奪される事件が多発してんの、まさかテメーらの仕業だったとはな!」
「は!?何のいいがかりだ!?俺らだって被害受けてんだ!」
「惚けんじゃねーよ!その強奪の黒幕が清水だって話だろうがよっ!」
「な、何だと…?」
下田の様子から見て全く知らない事は明らかなようだ。分かりやすい顔をして見せていた。
「しかしまー、刑事の前でよくも麻薬取引だとか堂々と言ってくれるもんだな…」
渡嘉敷は苦笑いしながらそう言った。
「まー今はそれは置いとくとして、我々の捜査で最近頻発している麻薬取引における現金強奪の事件で、うちの清水が噛んでいるのは明らかになったんだ。その様子から見てもオタクらも清水にハメられてるクチだな。お前らがここに匿ってるのは分かってる。拉致された女性警察署員は全員保護した。大人しく清水と沼田を突き出して貰おうか。」
下田の動揺は隠せなかった。味方だと思っていた清水らが背信行為を働いているかも知れないと言う事実に威勢はなくなっていた。
「組長に話して来る。少し待っててくれ…」
良く考えれば相手は襲撃などの強硬手段ではなく対話で当たって来ている。それはオマエラも被害者なんだぞと言う無言のメッセージにも思えた。今まで仲は良いとは言えないが、無駄な抗争はして来なかった。お互いのシマの中で一定のルールの中活動して来た事を考えれば無駄な抗争はみんな望んでいないはずだと思った。ここは事実関係を確認して冷静に対処すべきだと判断した下田はすぐ八坂の元へ向かうのであった。