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[姦獣共の戯れ]
【鬼畜 官能小説】

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迫りくる闇-2



「かずさ先輩、遅れてしまってすみませんでした」

「奥村チーフ≠ナしょ?会社の中なんだからきちんと呼びなさい」


微笑みながら訂正を促したのは奥村かずさという営業チーフだ。
由芽の四つ年上の二十六歳で、面倒見の良い彼女は他の女子社員からも人気が高く、プライベートでは「かずさ先輩」の他にも「かず姉」と呼ばれたりもしていた。

明るめの髪は肩に少しだけ掛かるセミロングで、緩やかにカールの掛かったその髪は実に大人っぽくて色気がある。
スッと整えられた眉と、猫のように大きな瞳は睫毛も長く、ツンと高い鼻と薄いながらも艶やかな唇は、女子社員だけではなく男性社員をも惹きつけていた。
スラリとした肢体もかずさの美貌を際立たせており、それは美しい身体を武器とするグラビアアイドルやレースクィーンに勝るとも劣るまい。


「聞いたわよ、痴漢を捕まえたって?あまり危険な事に首を突っ込まない方がいいと私は思うけど」

「あの場に奥村チーフが居たら、絶対に私と同じ事をしたと思います。私は《かずさ先輩》から、そう教わりました」


由芽とかずさの付き合いは小学生の頃まで遡る……。

酷く人見知りで引っ込み思案な由芽を心配した両親は、小学一年生の夏に近所の空手道場へ入門させた。
由芽は大きな声で挨拶するのも苦手で、いつも俯き加減にしていた。
道場に響く声にも怯え、突きや蹴りの練習すら覚束ない日々……そんな由芽に優しく声を掛けてくれたのがかずさだった。
  
その時、小学五年生だったかずさは、小さな由芽に付きっきりで接してくれた。
道場の入り口で由芽を待ち、一緒に大きな声で挨拶をしてくれた。
練習が始まれば隣りに立ち、正しい姿勢を教えてくれた。

そして由芽は強くなった。

大きな声で挨拶が出来るようになった。
背筋を伸ばし、顔を上げて歩けるようになった。
思い切り腕や脚を振り回せるようになった。
他の道場生の輪の中に、自分から入っていけるようになった。
年下の子にも積極的に声を掛け、面倒をよく見るお姉さん≠ノなった。

空手の強さではなく、人として由芽は強くなったのだ。
自分の意見を堂々と話し、正しい事を「正しい」と言える強い女性となっていた。

それは両親が望んでいた明るい女の子≠フ姿だった。

由芽にとって〈かずさ先輩〉は心の師であり、頼れるお姉さんでもある。
それは今年で二十二歳になった今でも、何一つとして変わってはいない……。


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