正義のヒロイン、煌く-3
『……あの女って私服警官かな?』
『他の乗客が取り押さえてたし、警察手帳も出さなかったから違うだろ……』
全く物怖じしないあの女が素人とは思えなかったが、しかしながら警官と決めつけるには確信を得られるものがない。
『桜庭のヤツ、制服の中に手を入れてたよね?もしもブラの中まで手を入れてたとしたら……』
『……下手すれば強制猥褻までいくかもね……うん』
下着の中まで手を入れて痴漢した場合、それには強制猥褻罪が適用される。
そして被害者の女性を逃げられない状態にして痴漢をした場合も同様である。
もしもあの時、いつものように取り囲んで痴漢を働いたとしたら、そしてその場面を押さえられたとしたなら、三人全員が強制猥褻罪で逮捕される羽目になっていただろう。
『自分は失敗しない』という自信が、油断と慢心を生んだのは間違いなかった。
いや、今までが運が良かっただけかも……と考えた瞬間、二人の掌には一様に汗が滲んできた。
『今日は……やめとこうか?』
『だね。ちょっと嫌な流れが来てるから、今日のところは我慢した方がいいね』
今さら桜庭という奴の事なんか気にかけても仕方がない。
いや、要らぬコトをベラベラと喋るかもしれないアイツ≠ヘ、もう仲間と呼ぶに値しない危険な厄介者だ。
『じゃあね。また後で連絡するから』
『うん。とりあえず明日ね』
申し合わせる事なく、二人は桜庭の電話番号と通話履歴を削除した。
それぞれに別れ、それぞれの帰路につく。
何をするにも明日になってから……尽きる事のない性欲は、《犯罪者》の衣を脱ぎ捨てるという選択肢を選ばない……。