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[姦獣共の戯れ]
【鬼畜 官能小説】

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正義のヒロイン、煌く-2




『この痴漢野郎、大人しくしろぉ!』

『ち、違うって言っ……痛いだろ!離せバカ野郎ッ!』

『あの子に不自然に近づいていくの私、見てました。この人、絶対に痴漢してます』

「ありがとうございます!次の駅って降りる予定の駅ですか?駅員さんに証言してくれたら助かります」

『君、大丈夫か?怖かっただろ』


この車両を支配しているのは《善》と《正義》だ。
一人の女性の勇気ある行動に鼓舞された人々は、この汚らしい《悪》を打ちのめさんと団結した。

多勢に無勢。
痴漢師・桜庭の命運はここで尽き、残る痴漢師二人は他人を気取ってその場を離れるしかない。


(危なかったあッ……なんなんだ、あの女は…ッ)


桜庭を捕まえた憎き女を二人はチラリと見た。

見事に女性の敵≠討ち取った高揚感からか、その頬は赤みを帯びており、明るめのブラウンに輝くポニーテールはポンポンと跳ねている。

それにしても人は見かけによらないものだ。
髪型は女子高生のようだし、簾に垂れる前髪に隠れたやや太めな眉も、少しだけ幅が広くて低い鼻も、一言で言えばかなり幼い顔立ちである。
一歩間違えたら痴漢のターゲットに選んでしまいそうなくらい可愛らしい容姿をしているのに、まさか正義感に溢れる怖い女≠セったとは……。


「私がついてるから大丈夫。もうちょっとだけ勇気を出して、一緒に駅員室まで行こ?そこでお巡りさんにさっきの事、ゆっくりでいいから話そうね?」


優しく微笑みながら被害者の少女に寄り添う姿は、曇りなき純心さに満ち満ちている。
悪意に燻んだ痴漢師共の目には、その光景が目障りなくらい眩しく、目が潰れるほどの光のオーラを纏っているのかと錯覚するほどに輝いて見えていた。

可愛らしくも忌々しいその女性をチラチラと見ていると、電車は次の駅へと到着して完全に停車した。
通報を受けた駅員と警官が待ち構える中、桜庭は押さえつけられたままホームへと連れ出されていった。


『この人ですか、痴漢をした人は?』

「そうです。私の他にも証言者が居ます」


もう桜庭は諦めたように静かになっていた。
駆けつけた駅員や警官に連行されていく桜庭を見送る事もなく、人畜無害な一人の乗客として知らぬ顔をするしかない。

二人は沈黙を貫いて車内に残った。
自棄をおこした桜庭が『俺だけじゃない』と二人を巻き添えにする可能性もあったし、なにより痴漢にも怯まぬ〈あの女〉が怖かったのだ。
涼しげな顔をしていても額には汗が滲み、微かにだが膝も震えている。
陰では女性を好き放題に嘲っていても、所詮は卑怯で肝っ玉の小さい奴等なのだから仕方がない。

二人はしばらく電車に揺られ、適当な駅で降りた。
目についた自販機に寄り、缶コーヒーを飲みながら話す。
しかし、その会話がいつも通りの楽しいものの筈がなかった。




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