新生活 Part 2-1
アメリカ社会は、かつて人種の坩堝(るつぼ)と呼ばれたが、最近は民族のサラダボウルなどとも言われている。異民族同士が混然一体とならず、一定の距離を保って共存するという意味だ。Kearny Mesa Highは、まさしく現代アメリカ社会の縮図であった。俺のクラスの生徒の2/3は白人で、残りは有色のヒスパニック、黒人、アジア系と言いった人種構成だった。しかし、一口に白人と言っても、いわゆるWASP(White Anglo-Saxon Protestant)と呼ばれるアメリカ社会多数派の米国市民は、ここではむしろマイノリティで、白人全体の半分くらいは最近、東欧や中東から来た移民者などだった。だから、俺と同様、最初はロクに英語が話せないやつが結構いた。そんなわけで、皆お互いに一定の距離を置いて、警戒し合っていた。
俺はクラスメートにあまり関心はなかったが、2人とびきり可愛い娘がいて、俺の注目を引いた。金髪でブルーの瞳のラナ(Lana)とブルネットでグリーンの虹彩のソーニャ(Sonya)だった。
ラナはチェコ、ソーニャはウクライナの出身で、いずれも一家でアメリカに政治亡命したことを後で知った。ESLのクラスで一緒だったので次第に打ち解けて話すようになった。俺が持っていたニンテンドーのゲームボーイに興味深々で、貸してあげると大喜びした。
この他、イスラエル人のデービッド(David)ともやがて仲良くなった。彼の父親はイスラエル空軍のパイロットで、当時の最新鋭戦闘機F15イーグルの飛行訓練を米空軍基地で受けていることをあとで知った。また、ポーランド系の彼の一家は、ロシア嫌いである一方、大の親日家で、テルアビブの実家には日露戦争の英雄で、連合艦隊司令長官の東郷平八郎提督の肖像画が飾ってあるとデービッドは自慢げに語った。実際、彼の家に遊びに行ったところ、リビングの壁には日本刀が、ふた振り懸けられているのを見て驚いた。
俺は新しい環境に徐々に慣れていったが、エロイベントとは無縁だった。周囲には金髪美女がわんさかいたにもかかわらず、不思議なことに、あまり欲情しなかった。日本にいた時よりも、オナニーする回数も減った。しかし、一時的になりを潜めていた俺のサチリアジスは、ある出来事を機に表面化した。しかも、フルスロットルで。