背信行為-7
「しかし沼田の野郎…、許せねーな。」
同期の沼田に強い嫌悪感を抱く吉川。当事から自分にライバル心を抱いていたのは気づいていたが、数年後、こんな形で再会するとは思っていなかった。保管していた麻薬を使い悪事を働いていたのは明らかだ。決して許せる事は出来なかった。
「でも吉川さん、どうしてここに?明後日からの予定でしたよね。?」
彩香が聞いた。
「明日からでしたが、その前に事件の事を頭に入れておこうと思って早めに来たんですよ。」
「そうなんですか。宮下さんは?」
「私は若菜ちゃんと打ち合わせ。連動して麻薬捜査をするから今日会う約束してたの。」
彩香は杏奈を何度か見かけた事があるので顔は知っていた。この2人がたまたま来たから良かったものを、もしこの偶然がなかったらと思うとゾッとした。
そこへ若菜が到着した。ラウンジにいると聞いてやってきたのであった。
「みんなどうしたの??吉川君まで。」
杏奈と吉川はさっきの件をどう説明すれば彩香を傷つけないか考えたが、躊躇っているうちに彩香が自分から説明を始めた。それを聞いているうちに、みるみると顔が鬼の形相に近づいていく若菜。
「死刑!!死刑よ!!そんな奴、死刑!今すぐぶっ殺してやるわ!」
そう怒って立ち上がった若菜を杏奈と吉川が必死で宥める。
「落ち着いて下さい!奴からは聞かなきゃならない事がたくさんあるんですから殺されちゃ困ります!」
「そうよ。もぅ…そう簡単に殺すとか言わないでよぉ。若菜ちゃんの場合、シャレになんないんだから…」
「ちっ…」
若菜は舌打ちをして仕方なく腰を下ろした。
「彩香ちゃん、本当に大丈夫なの?」
彩香を心配する若菜。
「私は平気です。」
そんな彩香をジーッと見つめた若菜。
「そう。でも本当に気をつけてね?決して一人で危険に立ち向かわない事。いいわね?」
「はい、すみませんでした。」
彩香は深々と頭を下げた。
「5課の沼田かー。て事はやっぱ清水も何かかんでるわね。清水は明日ゆっくりと絞ってやるとして、先にその沼田を血祭りに上げなきゃね。」
「血祭り…」
本当にやってしまいそうで怖い。目がほぼマジだった。
「取調室、開けといて?あ、やっぱいいや。麻薬保管室で取調するわ。私も入った事がないから見てみたいし。」
若菜らは沼田を軟禁している麻薬保管室へと向かった。