背信行為-11
スマホ画面に指をつけようとした瞬間、画面に清水からの着信の知らせが映る。
「…タイミングいいわね。」
若菜の顔が険しくなる。
「こんばんわ。」
若菜はぶっきらぼうにそう言った。
「ったく、目障りな女だ。」
普段から嫌味のある口調にさらに嫌味を上乗せしたかのような声でいきなりそう言った。
「目の保養にはなっても目障りにはならないよう気をつけてるんだけどね。」
「くくく、確かにな。目の保養にはなるわ。いつもお世話になってるよ。」
「あら?いい歳してシコシコしてるの?」
「ああ。してるよ。お前の事を想像しながら、な。手足を縛って服を切り裂いて泣き叫ぶお前をレイプしてる事を想像しながらシコシコしてるよ。」
「45のオッサンにガキみたいな妄想を抱かしちゃうなんて、私は罪な女ね。」
「くくく、まぁいいや。それは置いておき、今すぐ沼田を解放しろ。」
「ヤダ。」
「ちっ、毎回毎回ふざけた口を聞く女だな。」
「その口を俺のチンポで塞いでやる…、って?」
「さすが、分かってんな。エロい口してるからなぁ。他の奴らはそこにいる神田や、マギーや三島華英とヤリてぇって奴が多いが、俺は上原若菜派た。」
「あら嬉しい。じゃあ今度手コキぐらいはしてあげる。」
若菜は通話しながら吉川に目で合図をする。どこかで監視カメラでこっちの動きを見てるから探して来て、その意図が吉川には伝わった。吉川はさりげなく場を離れる。
「そりゃ楽しみだが、もうお前とはおさらばだからな。」
「辞めるんだ。」
「ああ、もうこんなクソ警察とはおさらばだ。用もない。仕方ない、沼田はくれてやる。どうせ下っ端で大した情報は与えてないからな。吉川が俺を探しに行ったようだから俺は消えるとするわ。お別れ記念に置き土産してってやるから、楽しみにしてろ。じゃあな。」
清水はそう言って電話を切った。
その瞬間、若菜は管理室に電話をする。
「上原です。全館封鎖するように!急いで!」
「は、はい…!」
対応した山中仁は慌てて全館封鎖処置を施す。が…。
「あ…、一箇所だけエラーが出てます!東非常口Bが封鎖出来ません!」
「奴はそこから逃げるつもりだわ!」
若菜は慌てて走り出す。沼田を放置して杏奈と彩香も後に続く。若菜から連絡を受けた吉川も東非常口Bに急ぐ。エレベーターが開き一階に着くとドアをこじ開けるように飛び出した若菜はハイヒールを苦にもせずに物凄い速さで走って行った。この時、閉じる間際にエレベーターに乗る人影があった。そして地下3階に向かって行った。