思いがけない出来事-2
そうした譲司の迷いに応えるかのように茂雄が言葉を続けた。
「まあ、いつも通りにと言われても、わたくしが見ている前ではやりにくいでしょう。
いや、それはわたくしにも想像がつきます。
ビデオに撮っていただくということも考えたのですが、
それではやはり臨場感が感じられないのではないかと思いまして。
それに、わたくし自身も、目の前で見てみたいという欲求もありますし。」
アナルバイブのくねりが与える激しい刺激に、美樹の声が一段と高まってくる。
茂雄はそんな娘の姿を視線の隅で追いかけながら続けた。
「いや、実は美樹がその時に、こんなことも言ったのです。
お父様の目の前で、お父様に見られながらカズさんに責められたら、
わたしは今までにないくらいに、ものすごく興奮してしまうだろう、と。
わたくしはそんな娘の淫らな姿を目の前で見てみたいのです。」
譲司にはなかなか理解しがたい話がさらに続いた。
「もしも、わたくしが止めに入ったり、
あるいは後で問題にするのではなどという不安がおありかと思いますが、
その心配はご無用に願いたい。
いや、反対に謝礼と申しましょうか、それなりの金額は払わせていただきます。
わたくしも、仕事柄、口約束はなかなか……。
ですので、ここに契約書を作ってまいりました。
ご一読いただければ……。」
譲司は茂雄の差し出した一通の書類を開いた。
そこにはいくつかの項目についての詳細が書かれていた。
一、今後、定期的に美樹に対する調教を茂雄同席のもと、
都内タワーマンション(カズ名義で購入)で行う。
カズが希望すれば、そのマンションに居住も可能。
二、茂雄がカズの様々なプレイのおおよそを知るまで、定期的継続的に行うこと。
最低週1日。時間はカズの店の営業時間外とする。
(カズが仕事を休まなければならない場合は休業補償として、謝礼のほかに、
1日50万円を支払う。)
三、茂雄が要求し、カズが承知すれば、美樹を相手として3Pを行うこともできる。
四、プレイ中生じたトラブル(ケガや妊娠、病気や後遺症等)のすべてについては、
カズに対しては一切責任を問わないこと。
五、店外デートとして行う場合には、店への支払いとは別に、
カズに対して100万円の謝礼を払うこと。
六、カズが望んだ場合には、カズを美樹専属のプレイ相手として、長期契約も可能。
条件等は年間2000万円を最低限として、茂雄と美樹のいずれかと、
カズの話し合いによって決定する。
七、カズにのみ、この契約を破棄、あるいは終了する権利があること。
決して悪い条件ではなかった。
一回のデートで100万円というキャッシュが譲司の手元に入る。
店を休んで調教に応じれば、さらに休業補償として50万が入るのだ。
しかも、この契約を終了する権利はカズの身にあるという。
果たして週に何回のデートが可能だろうか。
週に2回としても月に1000万以上の収入となるのだ。
いや、それ以上に都内のタワーマンションをカズ名義で購入となれば、
それだけでも最低でも3〜4000万はするだろう。
譲司が望めば、居住も可、ということは、譲司は今のホストたちとの共同生活を離れ、
高級マンションでの一人暮らしが可能になるということだ。
ただ、果たしてこの条件を名目通りに受け取っていいのだろうか。
まだ何か隠された奥や裏があるのではないか。
譲司はまだ疑心暗鬼だった。
娘との肉体関係を娘が年頃になって以来、ずっと持ち続けているという父親。
それは娘の結婚後も、当たり前のように続けられてきたという。
娘との肉体関係を持った父親というものは、
そこまで娘を盲目的に愛するものなのだろうか。
それも世間体を考え、いかにも普通の結婚生活を送っているというような偽装までして。
譲司にとって、近親相姦というのはそれほど衝撃的なことではない。
自分自身の初体験も叔母という近親者であり、それもアナルという異常な体験だった。
そして、そんな和美も、自分の亭主の元から逃げるときに、譲司を連れて逃げている。
その後も、和美と譲司の肉体関係は続き、結果的には子どもまでもうけたのだった。
幼少のころから自分の娘に対してSМ的な行為をしてきたという事実。
そして娘自らがその行為を受け入れ、自分の性癖へとしてしまった事実。
政略結婚とはいえ、娘が結婚した後もそうした関係を続け、
続けるだけでなくさらに発展させていこうとしている親子関係。
茂雄と美樹の間にある感情やかかわり方を、自分と和美との間にあったそれらと、
単純に比較することはできないと思いつつ、譲司はある種の共通点を感じていた。
正義感。そして独占欲。
この異常な関係を作ってしまった以上、
自分にしか、この相手を守ることはできないという思い込みともいえる正義感。
世間からは許されることではない関係。
そしてその相手を唯一無二の存在と考え、
誰にも触れさせたくない、誰にも邪魔されたくない、という独占欲。
そのためならば金に糸目はつけないというところだろうか。