恵介の自信喪失-4
「で、オレはどうすればいい?」
シャワーを済ませ、詩織の両親の寝室に連れてこられた恵介は、
すべてを詩織に任せるつもりだった。
もしかすると積極的になり切れない、どこかしら醒めた気持ちもあったのだろう。
「とにかく、オレは詩織に言われるままにするから。」
「ずいぶんと従順だこと。素直すぎて気持ち悪いくらいよ。」
「だからって調子に乗って虐めたりしないでくれよ。」
「さあ、どうかしら。じゃあ、そのガウンを脱いでベッドに寝てちょうだい。」
「いきなり裸にされるのかよ。」
「文句は言わないんでしょ?手足を縛られてからじゃ脱げないからよ。」
恵介は渋々詩織の言葉に従って、ガウンを脱いだ。
そしてそのままベッドへと向かう。
「ブリーフも脱いで。で、仰向けに寝て。ベッドの真ん中あたり。」
恵介はいつになく素直に詩織の言葉に従った。
「そ。じゃあ、まずはこれを自分の手にはめて。」
それはさっき詩織が洗濯ロープで作ったわっかだった。
「それを手首に。そう。」
「結構ゆるゆるだぜ?」
「実際に動けないようにしてもいいんだけど、あくまでもプレイというか……。」
「いやだったらば逃げられるっていうことか?」
「そうね。選択の自由はあげることにしたの。」
そう言いながら詩織はその輪に洗濯ロープを結び、ベッドヘッドを一周させた。
「で、こっちに結ぶ。どう?」
「なるほど。ある程度手は自由に動かせるけれど、
手首から輪を外さない限りベッドからは離れられないっていうわけか。」
「そ。手の自由度はどう?」
「ああ。このくらい動けば、詩織の股間まで手が届く。」
「拘束されているのに、触るつもり?」
「詩織もそのつもりで、この長さを考えたんだろ?」
「まあ、確かにそうだけど。さ、次は足よ。
足は閉じられないように、こうやって……。」
詩織は恵介の右足にラップを幾重にも巻き、
それをベッドの右側からベッドの下を通し、左側へと持ってきた。
「さ。こっち側で左側も……。」
恵介の足は大の字に広げられた形で固定された。
「手に比べると、ずいぶんと不自由だなあ。」
「蹴られると困るからね。」
「蹴られるようなことをするつもりなのか?」
「さあ。それは流れだもの。今はわからないわ。」
「じゃあ、照明を消すわ。あ、忘れてた。はい、これつけて。」
詩織は恵介にイヤフォンを渡した。
「どう?音楽を聴きながら、っていうのは。」
「集中できない気もするけれど……。」
「聞こえてくるのは音楽だけじゃないのよ。
恵介の好きなビデオから音声だけダビングしたものとかも流れるわ。」
詩織は手元のプレーヤーを操作した。
「なるほど。これで暗闇となれば、想像力が働いて勃起しそうな気もするな。」
「雑念が入らないように、ボリュームは大きめにしておくわ。」
恵介の耳には、おそらく女子高生役の女優が数人の男たちに、
夜の教室でレイプされているシーンの音声がかなりの音量で聞こえていた。
「恵介?聞こえる?」
詩織が恵介の耳元で話しかけても恵介からは返事はなかった。
「これでよし、っと。」
詩織はプレーヤーの音量を下げ、耳元でささやいた。
「どうする?アイマスクはつける?」
「どうせ暗くするんだろ?」
「でも、真っ暗にしたらわたしが動けないもの。
うっすらと照明はつけておくから、恵介は念のためにつけておいて。」
「まったく、こうなると拉致監禁状態だな。」
そう言いつつも、恵介は詩織の言うことに素直に従い、アイマスクをつけた。
「じゃあ、始めるわね。」
詩織はそう言うと部屋の照明を落とし、自分も服を脱ぎ始めた。
「脱いでいるのかい?」
「そうよ。早速、聴覚が研ぎ澄まされてきたみたいね。」
詩織はまだプレーヤーのボリュームは落としたままだった。
恵介は布がこすれる音で、詩織が服を脱いでいると想像したのだろう。
「次は下着だね?」
「ええ。」
「ブラを外しているのかな?」
「ええ。そうよ。」
「…………。パンティーはつけたままかい?」
「ええ。全裸なのは恵介だけ。ちょっと待ってて。」
「お待たせ。今、あなたの股間に向けてスポットライトをつけたの。」
「股間に?」
「そう。元気の戻らない恵介ちゃんが萎れているのがよく見えるようにしてみたの。」
「そうか。アイマスクのせいで全くわからないよ。こっちは真っ暗なままだ。」
「そう。じゃあ、少し刺激してあげるわね。」
恵介は神経を集中させ、詩織の動きを追った。
ベッドの右側がたわみ、少し揺れた。
詩織がベッドの上に乗ったのだろう。
そのまま大の字に広げたままの太腿あたりに座ったのがわかる。
「こうしてみると可愛いものね。」
手が伸びてきて、恵介の萎んだままのペニスに触れた。
「冷たい、手だ。」
「そ?」
しなやかな指が一本ずつ、恵介のペニスに絡むように握られていく。
いつもの恵介ならこうなる前にすでに勃起しているはずのペニスだったが、
今夜は握られたくらいでは何の反応もなかった。
ペニスを握りしめた手はゆっくりと上下し始める。
唾液を垂らしたのだろうか、生暖かい感触の後、ぬるっとした感触が先端を覆う。
「唾を垂らしたのか?」
「ええ。我慢汁さえ出ていないんですもの。」
先端に垂らされた唾液は、親指によって亀頭全体へと広げられていく。
確かに一つ一つの動きが妖しげに感じられる。
今までセックスの一つ一つの過程をこんなに詳細に追いかけたことはなった。
行為とはいくつもの行動が積み重なってできるものなのだなあと、
恵介は妙なところで感心していた。
ふいに生暖かい感覚がペニスの先端を包んだ。