刑事の妻-1
ある日の昼間、千城県県警本部を中心にREVOLUTOR事件と3億円事件を捜査している中、若菜の元に来訪者が現れた。アポはなかったが、その名前を聞きすぐに通すように指示を出した。間も無く総監室に来訪者はやって来た。
「失礼します。」
ドアが開くと同時に、待ち構えていた若菜はすぐさま歩み寄り、来訪者が抱っこする赤子に気を配りながらハグで迎える。
「さとみちゃーん!」
「アハッ、ご無沙汰してます!」
来訪者は吉川さとみ、旧姓石黒さとみであった。サーガ事件の時の若菜をリーダーとする特命捜査対策室のメンバーで、サーガ事件が解決した後に、やはり同じメンバーであった吉川啓吾と結婚し退職した。
「わー、可愛い〜♪私の次に可愛い〜♪」
そう言って赤ん坊を見て表情を崩す若菜に苦笑する。
「相変わらずですね♪」
「アハッ、紀香ちゃんだよね?ホント可愛い♪さ、座って??」
「ハイ、失礼します、総監♪」
そう言って敬礼するさとみに親指を立てた。
「あれから2年かぁ。早いなぁ。」
「今思えば特命捜査対策室って、いいチームでした。近藤さんは残念だったけど…。」
「そうねぇ。マギーと結衣ちゃんは今でもここで頑張ってくれてるけど、他のメンバーは元気でやってるのかな。吉川君は元気?その後どう?」
「まだ中毒症状はたまに出ますが、だいぶ良くなりました。」
「そっかー。まだ症状は消えないんだ。ホント麻薬は人間をいつまでも苦しめるわね。」
「あ、でも最近はホント、だいぶ良くなりました。もう取り乱す事はなくなったんで。」
「そう、なら良かった。いなぎ東署の再建も順調だって報告は受けてるわ。」
「真面目に頑張ってます。地元の方々との信頼も回復して来ましたし。」
「そっか。どう?いなぎ市は?住みやすい?」
「はい。」
「うん、ホント良かったわ、幸せそうで。吉川君、デレデレでしょ?」
「はい。もう帰って来ると私より先に娘のトコに行きますからね。妬けちゃいます。」
「ハハハ、男なんてそんなもんよ。俊介もそうだったし。」
そう言って優しい目で紀香を見つめる若菜であった。
「結衣ちゃん、立ち直りましたか?」
サーガ事件の際、犯人の罠にはまり、もう少しで大事に至る危険に遭った結衣を心配する。
「ええ、仕事に打ち込んでるわよー??」
「じゃあ良かった。マギーは?」
「華英ちゃんと活躍中よ?」
「そうですか。頑張ってますね、マギー。金田さんにも会いたいなー。」
「ねー。じゃあ今度同窓会やろうよ。みんなで。」
「あ、いいですね!」
すっかり雰囲気が和らいださとみに、若菜は幸せそうで安心したし、嬉しくもあった。