刑事の妻-10
「ありがとう、さとみちゃん。目が覚めた。」
言葉は少ないが、その目と言葉はさとみを十分に納得させるだけの力強さを感じさせた。
「私がこの事件を解決に導く。だからさとみちゃんは紀香ちゃんの幸せだけを考えてて?私がどうかしてた。私の心の中にはまだ刑事としてのプライドが残ってる。犯罪を憎む炎はまだ消えてない。もう上原さんや華英ちゃん…いえ、千城県のみんなに迷惑をかける訳はいかない。私の全てをこの事件にぶつける。私は刑事。刑事だから…。」
迷いは消えた。迷っていた自分が信じられないぐらいに、刑事としての道がはっきりと見えた気がした。
「そう、それでこそマギーだよ!」
マギーの手を握るさとみ。その手を力強く握り返して来るマギーが頼もしく感じた。
「もう大丈夫。上原さんを警視庁に送り返してやるぐらいの気持ちで、私、頑張る。」
「うん。」
「言いたくない事言わせちゃってゴメン。でも嬉しかった。」
さとみに辛い事を言わせてしまったのもやはり自分のせい。これ以上他人に迷惑をかけるわけには行かない。マギーの刑事魂は再び燃え始めたのであった。
華英と結衣が戻ってきた。
「何を話してたの??」
そう華英が聞いて来た。マギーは心の中で華英に謝りながらも
「ナイショよ、ナイショ♪」
と笑い肩をポンポンと叩いた。
「ナイショって何よー??」
「何でもないわよ。」
「教えてくれてもいーじゃないのよー!」
「しつこいわね、アンタ。だから彼氏もできなのよ?」
「よけーなお世話よっ!!」
そんなやりとりをする2人をさとみはニコニコしながら見つめていたのであった。
さとみが帰り、結衣は仕事に戻った。捜査一課に戻ったマギーと華英。努めて明るく振る舞う華英にマギーは思う。
(相談もせずに一人で危険に飛び込んで行ったのは私の責任。本当にゴメンね、華英。もう華英にそんな事させなくて済むよう、頑張るからね?)
マギーは強くそう思った。
「ねぇ華英、もう一回事件の事初めから振り返って詳しくおさらいしたいから付き合ってくれる?」
華英はえっ?と言う顔をしたが、すぐに、いいよ?と答えた。佐川明子全裸張り付け事件から3億円事件、そして高島謙也までの捜査資料を初めから読み返すマギー。そんなマギーを見ながら華英は先日の事をマギーに話そうと思ったが、あまりの真剣さにそれを口に出す事が出来なかった。
(勝手な真似して、もしかしたらマギーにまで危険な目に晒すとこだった…。ゴメン、マギー。もう勝手な真似はしないからね?)
時には先輩、時には姉として大好きなマギーにそう誓った。
「うーん。…ん??、あっ、そっか…」
マギーは資料を見ながらそう呟く。マギーの頭の中で疑問に思った事や不審に思った事が次々と湧いて来る。マギーの中でようやくぼやけていた事件の概要がはっきりして来たような気がした。
覚醒…、マギーの今の姿はまさにその言葉がピッタリと当てはまった。