お節介。-3
「さーて、生意気なギャルちゃん相手にしてる場合じゃないわ。夕ご飯作らなきゃ!」
鼻息を荒くして立ち上がる若菜。太一を亜希子に預けて台所に立つ。
「上原さんが料理するんですか??」
手伝う様子のない亜希子を見て言った。
「若菜ちゃんは家にいる時は自分で作るって言ってね、いつも自分でやるのよ?一人でやりたいんだって。」
「そうなんですか。意外とちゃんと主婦してるんですね。」
「うん。若菜ちゃんは頑張ってるわよ?警視総監とか、きっと私が思うよりもずっとずっと大変なんだろうけど、でも夜遅くまで起きてて、朝は早起きで洗濯、掃除、アイロンがけまで全部こなしてるのよ。」
「え?ホントですか??」
「うん。家にいるときはただの主婦だし、ちゃんとやらないとお母さんみたいになれないって言って頑張ってる。俊介が言ってたわ。みんなが寝静まった頃、若菜ちゃん、お仏壇の前で良く泣いてるって。お父さんともお母さんとも、死に目に会えなかった事を今でも後悔してるみたい。彼女はきっとホントはそんな強い人間じゃないのよ。きっと上を向いて歩いてないとすぐに倒れちゃうような子なのよね。だから私はそんな必死な若菜ちゃんを支えてあげたいの。でも私は逆に若菜ちゃんのあの笑顔に力を貰ってるのよね。若菜ちゃんの笑顔、私ね、大好きなの。今ではホントの娘のように思ってるわ?」
料理を作る若菜の背中を見て亜希子はそう言った。それを黙って聞いていた華。
「…、まー、料理だけは上手いよね、お姉ちゃん♪」
「上原さんって料理上手いんだ…。噂ではカツ丼しか作らないって聞いたけど…。」
「あー、アレは地獄だったわぁ。お母さんが作った、お父さんが大好きだったカツ丼を再現するって言って、毎日毎日試作した事あってね、一か月カツ丼を食べさせられた事あったなー。」
亜希子も笑いながら言った。
「あの頃、みんな太ったわよねー?」
「うん。パパなんか顔が丸々してたよね!」
「そうだったわね。アハッ!」
「華さんも太一さんも、みんなまん丸になってたよね!」
亜希子と静香は楽しそうに話していた。
「華英ちゃん、きっと今日はカツ丼だよ??」
「ホント?」
「うん。お姉ちゃんは大切な人を家に呼ぶと必ずカツ丼だから!」
「そうなんだ。」
華英は何気に嬉しかった。自分の事を大切な人と思ってくれていたなら幸せだ。逆にそんな話を聞いてカツ丼ではなかったら立ち直れないが、肉を煮込むあまじょっぱいいい香りがすると、華英は安心したのであった。