ゆえとナオさん 未来編-9
私たちはシャトルに乗り込んで、
軌道エレベーターの、移動する下端を目指す。
軌道リングからぶら下がる軌道エレベーターは、
何本もあって、
下端は空気抵抗の無い対流圏外にある。
赤道に対して斜行していて、
リング自体も回っているので、
下端ポートは、
高緯度帯を除く、地表の全ての地点を通る。
天気のいい日に、
下端ポートが、
南西の空遠くから、
音も無く雲の上を掠め飛んで行く姿は、
地球の風物詩だ。
シャトルはそれを追っかける。
地上側に固定された地点が無いので、
下端ポートまで、
飛び上がらなきゃいけない面倒はあるけど、
実際は国内移動よりも早いし、
世界のどの国と地域に対しても公平だ。
最初期の宇宙エレベーターは持つ国と持たざる国とのイザコザで
調整が難航したらしい。
ぶっ倒れれば地球を2周するくらいの長大な建築物なので
話し合いも大変だ。
下端ポートで上手に乗り継ぎすれば、
おトクに世界旅行ができちゃう。
軌道エレベーターは、人のインターネットだ。
ローコストで自由に世界中に行けて、
色んな人とリアルに話ができる。
そして、
そのまま軌道エレベーターを昇れば、
軌道リングに出られる。
宇宙に出られる。
軌道リングは無重力だ。
無重力環境を利用した工場や、
研究施設、病院などがある。
軌道リングから外側には、
地上側と釣り合いを取るように外桟橋が伸びていて、
遠心力で宇宙船をブン投げる。
ホーマン遷移軌道で飛んでって、
月面工場や、
ラグランジュポイントへの定期航路がある。