ヒーロー-7
華英はそんな光景を、まるで映画やドラマを見ているかのようにポーっと見つめていた。華英の目にはガタイのいい大人数を華麗な体捌きで攻撃をかわし、拳や蹴りで次々に倒していく一人の顔見知りの男の姿が映っていた。1人、また1人と床に倒れていく覆面男達。意外な情勢に驚くリーダーと輝樹。全てがスローモーションのように見え、そして主役の大悟の体から光が放たれているかのように美化されて見えた。倒れた男が起き上がり、ゾンビのように再び大悟に襲いかかる。次第に大悟にも疲労の色が見えて来る。2発、3発と攻撃を受けながらも懸命に戦う大悟に心を奪われて行った。
そんな時、
「大人しくしろ、お前ら!!」
と言う怒鳴り声が響く。華英が目を向けると杉山の姿が見えた。いつものチャラけた姿はなく、毅然とした姿で拳銃を構える杉山は別人のようであった。杉山に続いて背後から夥しい数の刑事がなだれ込んで来た。大悟は覆面男達からスルリと抜け、華英の元へ向かう。人質にとられぬよう素早い動きを見せた大悟の突破を許したリーダーと輝樹。大悟は華英を抱え部屋の隅に移動する。2人の前を刑事が守りについた。
「大丈夫か!?」
大悟は着ていたシャツを華英の体に巻きつける。
「わ、私…」
震える華英を抱きしめる大悟。
「もう大丈夫だ。何も言うな!」
強く抱き寄せられ顔を大悟の胸に押し付ける華英。大悟の腕の中は物凄く温かかった。
「あんたらウチの大事な刑事にとんでもない事をしてくれちゃったわよねー!!」
全員が振り向く程の怒りの声…、いよいよ上原若菜の登場であった。覆面男達が全員怯む程の存在感。腕を組み覆面男達を睨みつける。
「私をレイプするですって…??一億マンコ〜年早いわっ!!」
その言葉に杉山だけがクスッと笑った。他の人間全員に緊張が走る。
「マジか…!?本物か…!?」
全国に名の知れ渡った有名な警視総監の上原若菜が目の前にいる事に目を疑った。
「こんないい女が2人いる訳ないでしょうが!てか、許さないし。覆面見ると、何だか殺意が湧いて来るのよね…。マジでムカつく…。いつまでもゴキブリみたいに私の周りをウロチョロする忌々しい覆面…。」
そう言った瞬間、1人の覆面男が若菜に襲いかかって来た。
「うおー!!」
そんな覆面男の股間に向けてハイヒールのかかとで渾身の蹴りを見舞った若菜。男なら聞くに耐えない鈍い音と男の激しい呻き声が聞こえた。
「うん、いい感触♪」
「あ…、あ…」
男は口を開き白目を剥いて床に崩れ落ち、泡を吹いた。
「もっと手応えないと、キックの時、私のいやらしい黒のパンティが見えないわよ?せっかく勝負パンティ履いて来たんだから、頑張ってよね??」
短めのスカートの丈をチラッとめくり挑発する若菜であった。