ヒーロー-10
そう杉山と話しながら、華英は大悟を気にしてしまうのは、さっき恥ずかしい姿を見られてしまったからか、また違う理由なのかは分からない。だがチラチラと無意識に大悟に視線を送ってしまう。
「それで今日の秘密捜査だったんだけど、輝樹を大悟くんにマークして貰って華英ちゃんとの行動を監視して貰う予定だったの。輝樹は昨夜ずっとガルモ内にいたし大悟くんがずっと監視してた。でも輝樹は間違いなくガルモにいる。車もあった。彼の車には発信器をつけておいたから、もしかしてバレたか、発信器が彼の自宅で落ちちゃったかと思って輝樹を絶対に見逃さないよう監視していた所に、何故か発信器が動き出したのよ。私達、混乱したけど、その時ふと頭に浮かんだの。ガルモに置いてある車は同じ車種、色の同一車なんじゃないかって。輝樹は同じ車を2台持っていて、発信器のついていない車でガルモに来たんじゃないかって。それに華英ちゃんとの約束の時間になっても輝樹は出かける様子は全くなかった。でも同時に発信器付きの車は華英ちゃんとの約束の場所に時間通りにつくよう動き出した。華英ちゃんと会いに行くのはガルモにいる輝樹とは違う、もう1人の輝樹なんじゃないかって、ね。」
「もう1人の輝樹…?」
「ええ。私は輝樹は双子なんじゃないかって考えたの。ガルモで働く輝樹と、さっき会った輝樹は多分別人のはず。」
そう言われて華英はハッとする。
「確かにガルモでの輝樹は紳士的だったのに、さっきの輝樹は性格がまるで反対だったような気がする…」
性格が違う双子…、そう考えれば店との性格とまるで違かった事にも合点が行く。
「杉山君を呼び出して輝樹について調べて貰ったわ。そしたらやはり輝樹には健司と言う双子の兄がいる事が分かったの。その時点で華英ちゃんが危ないと言い出した大悟くんが慌てて輝樹の自宅に向かったって訳。大悟くんの咄嗟の判断が華英ちゃんを救ったのよ?」
大悟は頭をかく。
「その代わり健司を取り逃してしまいましたから、決して褒められたもんじゃないっす…。」
「ううん?キーマンになりそうな健司を見失なったのは痛いけど、でも私は華英ちゃんの身の方が大事だったから、大悟くん、グッジョブよ!」
「そう言っていただけると嬉しいっス!」
大悟はニコッと笑った。
「私はまた1つ、キーマンを取り逃す要因を作って迷惑かけてしまったんですね…。本当にごめんなさい。でも大悟さん、ありがとう。」
顔を上げて大悟を見つめる華英に、大悟は何だか胸がドキドキした。
「あ、い、いや…、いいんスよ…」
華英の眼差しに訳もなく緊張してしまう。
(あ…、これ、熱視線よね??もしかして華英ちゃん…)
若菜はニヤ〜っと笑って華英の事を見つめていたのであった。