閉ざされた扉の向こう側へ-3
「それと同じように、敏明君を治す方法は、
真奈美が施す方法しか他には手がなかった、
そういうことですね。」
「はい。それでも最初に考えていた以上に時間がかかったと。
成長期の子どもたちの治療は、
成人のそれよりもはるかに難しいのだとも言っていました。」
「大人は、とかく子どもたちを一つの枠にはめて見がちですが、
実はそうではないんですね。」
「はい。お父様の理想は、個々に応じた治療法の確立です。
そのためのデータ収集と文献調査、そして治験です。」
ただ、協力してくださる方はそう多くはないようです。」
「性に関することは、多くがタブー視されるものが多いからでしょうね。」
「はい。そういう意味でも、今日、おじ様や奥様に来ていただけてことも、
お父様は大変喜んでいました。」
「やはり、香澄からもデータを取るということですね。
いや、おそらくわたしの今までの行動からも、
そのデータというのは取られているんでしょ?」
「黙っていてごめんなさい。ただ、主には観察です。
ある条件の下で人はどのような行動をとるのか。
そのこと自体が貴重なデータとなります。」
「じゃあ、紗理奈さんに誘われて、あんなことまでしてしまったわたしの行動も、
何らかのテータとなると言う事ですね。
「ええ。主には性衝動や性刺激に関するデータです。
どれもこれも貴重なデータと言う事はご理解いただけますか?」
「紗理奈。もっと砕けて話すんじゃなかったかい?
ぼくが君に誘惑されて、ぼくは久しぶりに性的な刺激を受けた。
肉体的にも精神的にも。
そして、今までにないくらいに激しく勃起し、
君の身体を味合わせてもらった。
そんなことも、そのデータとして少しは役に立つのかな?」
「ええ。もちろん。そしてデータには表れないわたしの感情も動かしました。」
「紗理奈の感情?」
「ええ。数値化できないものみたいですよ。ときめくとか、惹かれるとか。」
「数値化できない感情もある、と?」
「ええ。人間ですから。」
「だから、こうした思いがけない行動にも出る。」
そう言うと、雅和は紗理奈に抱き付き、キスをしながら股間へ手を伸ばした。
紗理奈は黙ってそれを受け入れ、しばらく雅和にされるままになっていた。
雅和は指で紗理奈のクリトリスを突っつきながら、時折割れ目の中へ指を突っ込んだ。
中を掻き回すような動きに、紗理奈は喘ぎ声を上げ始めた。
すると、壁のインターフォンが鳴った。
「あ、おじ様、ちょっと待って。」
そう言うと紗理奈は雅和から離れ、インターフォンを手に取った。
「あ、お父様。はい、あ、ごめんなさい。はい、お連れしました。」
紗理奈は2,3度頷くと、インターフォンを置いて雅和に話しかけた。
「おじ様。叱られちゃった。皆さん、お待ちかねだって。こちらへどうぞ。」
紗理奈はそう言うと、ベッドの横に置かれたソファーへと雅和を導いた。
「どうぞ。おじ様。お座りになって。」
「紗理奈。また、言葉が。」
「あ、そうだったわ。やっぱり癖かも。座って、おじ様。
今、飲み物を持ってきます。」
紗理奈は部屋の隅にあるカウンターからグラスに入った飲み物を持ってくると、
雅和に手渡し、雅和の隣に座った。
そしてもうずっと前からそうした関係だったかのように、
雅和の股間にすかさず手を伸ばす。
雅和のペニスは再び紗理奈の温かく柔らかい手に包まれた。
「今度こそ、乾杯かな?」
「ええ。でも、全員がグラスを合わせる乾杯はもう少し後になるわ。」
「まだ、何かあるのかい?」
「その前に、お互いの身体を合わせなくては。
おじ様。最終確認です。」
「どうしたんだい?今更改まって。」
「おじ様、もう何があっても驚かない?」
「そうだなあ。そもそも今、美沙希とこうしていること自体が大きな驚きだし、
自分自身の中にこんな気持ちや欲求があったと言う事にも驚いている。」
「それはおじ様に限ったことではないかという事も理解されていますよね?」
「ぼくに限ったことではない?
ああ、ぼくの知らない真奈美がいて、
ぼくの知らない香澄がいる、という事だろう?
大丈夫。およその見当はついている。
驚かないというよりも、楽しませてもらうのが正しいんだろうね。」
「ここまで来て正しいとか正しくないとかも必要ありません。
感じるままでいいんじゃないですか?」
「でも、感じるままというのなら、
そこには怒りや失望といったものもあるっていうことだ。」
「ええ。でも、感情は一時のもの。
そこは考えていただいて、本質を感じ取ってくださればいいと思います。」
「わかった。心から楽しみ、怒り、そしてその本質を考えよう。
もっとも、紗理奈の身体に溺れそうな自分が偉そうなことは言えないけどね。」
「あら、おじ様。それはわたくし……じゃなかった。
わたしも同じ。奥様にちゃんと謝らないとね。」
「ああ、ぼくも香澄には申し訳ないと思っている。」
「でも、奥様も、きっとおじ様に謝りたくて仕方ないと思いますよ。」
「香澄もぼくに謝りたいようなことがある?
やはり、そう言う事なんだろうね。」
「ええ。奥様も、ご自分をしっかりと解放されているようですから。
では、よろしいですね?」
雅和がうなづくのを見た紗理奈は天井の一角に向かって頷いた。
「さあ、いよいよパーティーの始まりです。」
紗理奈が指さす方を向くと、先程のスライドドアがゆっくりと開いた。